減塩は高血圧、心臓病、脳卒中などの非感染性疾患を予防することで、公衆衛生的な大きな成果を達成することにつながる。本研究は、システム・ダイナミックスの手法により集団における減塩に関して基本的および実践的なシミュレーションモデルを開発することを目的とした。 昨年度までの研究では、実践的モデルにより高塩分嗜好の者による高塩分食品の選択と低塩分嗜好の者による低塩分食品の選択についてシナリオを作成して平均食塩摂取量を計算した。その結果、高塩分嗜好者に早期に低塩分食品を選択するよう誘導することが、平均食塩摂取量を低下させるために重要であることを明らかにした。 最終年度である本年度は、減塩のシミュレーションに関して汎用性の高い基本的モデルを開発した。高齢者の割合が高く、濃い塩味の好みを持つ集団を想定し、この集団を三つの年齢群、すなわち未成年者(20歳未満)、若年成人(20-49歳)、高年成人(50歳以上)に分け、それぞれの年齢群を塩味の好みで濃い塩味と薄い塩味の2グループに分けた。学校給食における減塩あるいは成人健診での食塩摂取量検査の導入を組み合わせた4つのシナリオ(基準、学校給食、健診、組合せ)間で成人の平均食塩摂取量の変化を比較したところ、健診と組合せのシナリオが基準や学校給食のシナリオより集団の食塩摂取量を効果的に減少させた。これらの結果より、成人において食塩摂取量が高めであることを認識させる新たな検査が、集団の平均食塩摂取量を減少させる有効な手段になることが示唆された。
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