研究課題
平成26年度は,宮城県登米市で実施された高齢者健診の結果と老人医療費をリンクしたデータを使用し,平成25年度実施の研究をさらに進めた。平成25年度は,2006年度時点において宮城県登米市在住の65歳高齢者のうち,高齢者健診(体力測定を含む)を受診し,国民健康保険に加入していて,同年度及び2008年度に一度でも医療サービスを利用した65歳以上高齢者1,033人(男性430人、女性603人)を研究対象とし,地域高齢者の体力測定値(握力,Timed Up-&-Go Test,長座位立ち上がり時間)を通じて,運動機能の低下が将来(二年後)の医療費に及ぼす影響を調べた。統計学的方法は,2008年度の月あたり医療費を目的変数,性,2006年度年齢,2006年度の月あたり医療費,さらに健康度自己評価を調整変数,健診時に実施した体力測定から得た各変数それぞれを独立変数とした重回帰分析を用いた。その結果,長座位立ち上がり時間の1秒増加だけが2008年度の月あたり医療費を3.0%有意に上昇させており(p=0.020),さらに男女別にみると,女性における長座位立ち上がり時間の1秒増加だけが2008年度の月あたり医療費を3.7%有意に上昇させていた(p=0.009)。平成26年度は平成25年度の結果を受けて,三つの体力変数全てを同時に投入して同重回帰分析を行ったが,その結果,長座位立ち上がり時間の1秒増加だけが2008年度の月あたり医療費を3.4%、ほぼ有意に上昇させており(p=0.054),女性に限定すると,3.4%有意に上昇させていた(p=0.018)。高齢者の長座位立ち上がり時間が将来の医療費に独立的に強い影響を及ぼしていることの確認を得ることができた。長座位立ち上がり時間の計測は高齢者の自宅などにおいても可能であり,地域の保健活動に取り入れ,運動機能低下のハイリスク者を選定し,その予防活動を展開することで高齢者の医療費抑制にも繋がる可能性があると考えられた。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度は,申請書に示したバックアップのフィールドである北海道美唄市から本研究課題遂行において必要なデータをほぼ得ることができた。
北海道美唄市より本研究課題遂行に必要なデータをほぼ得ることができ,①健康長寿であることが終末期医療費・介護費用抑制に寄与しているか。②介護予防事業参加がこれら費用抑制に寄与しているか。などを分析中である。
研究フィールドである美唄市に依頼していたデータ加工にかかる費用が,当初見込んでいたものよりも少額であったため。
研究内容の精度を高めるため,構築したデータセットに最新のデータを加える際に発生する費用,及びその打ち合わせのための旅費などに充当する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
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