研究課題/領域番号 |
24590839
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪府立公衆衛生研究所 |
研究代表者 |
森川 佐依子 大阪府立公衆衛生研究所, 感染症部, 主任研究員 (40321939)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 呼吸器ウイルス / 網羅的検出 / リアルタイムPCR / 小児科 |
研究概要 |
小児科領域では、急性呼吸器感染症は1年を通じて最も多く認められる疾患である。原因となるのはほとんどがウイルスであることが知られているが、ウイルス種も多彩であり、さらに同一種のウイルスが多くの血清型に分けられるため、大半が症状からの診断のみで、多種の原因ウイルスを詳細に解析したデータは少ない。従って、迅速性に優れ、重感染の検出も可能なリアルタイムPCRでの呼吸器系ウイルスの検出系を構築し、重感染の有無、感染後の症状との関連性といった情報を還元することを目的とする。 研究初年度である平成24年度は、リアルタイムPCR法により、多種の呼吸器疾患ウイルスの遺伝子を同一条件にて増幅、検出できる系を構築することを予定しており、予定通り、呼吸器疾患の小児から検出されることの想定されるウイルスである、コロナウイルスHKU1,OC43,NL63,229Eの4系統、パラインフルエンザウイルス1~4型、アデノウイルス、パレコウイルス、RS ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトボカウイルス各遺伝子について、文献を基に検出系を作製できた。エンテロウイルスとライノウイルスについては、共通領域をリアルタイムPCRにて検出後、陽性の検体よりコンベンショナルRT-PCRを行い、増幅産物のシーケンスにて型別を行うこととした。 陽性コントロールDNAを用いて測定した各検出系の検出感度は、おおよそ100コピー/1ulサンプルDNA前後であり、感度的にも充分であると考えられた。当研究所にて通常行われている、国立感染症研究所のインフルエンザウイルス検出マニュアル記載法によるインフルエンザウイルス検出と合わせ、既知の呼吸器ウイルスについては、ほとんどを網羅できると考えられる。 平成25年度の1年間、呼吸器疾患を呈する小児の病原ウイルスを検索することで、小児科領域での各ウイルスの流行期が明らかになると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は検出系の構築を行う計画であり、計画通り、主要な呼吸器疾患の原因ウイルスである、コロナウイルスHKU1,OC43,NL63,229Eの4系統、パラインフルエンザウイルス1~4型、アデノウイルス、パレコウイルス、RS ウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ヒトボカウイルス各遺伝子について検出系を作製し、感度も良好であることが確認できた。 さらに、協力可能な病院に検体採取を依頼済みで、期間2年目となる平成25年度は、年間を通じて呼吸器疾患の小児から季節に偏りなく検体採取が可能となっているため。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、呼吸器感染症を呈する患者からの鼻咽頭由来検体を採取し、1年を通じて検体からのウイルス検出を行う。一週間に10検体程度、合計約550検体を予定している。 検体はリアルタイムPCRによるウイルス検索を行い、速やかに結果を還元し、どの年齢層でどういったウイルスが現在検出されているのかを医療機関と共有することで臨床に役立ててもらう。さらに各ウイルスの流行期についても検討する。 また、一部の呼吸器ウイルスは、ウイルスが検出されるものの、呼吸器症状との因果関係がはっきりしないウイルスも存在するため、申請時に予定していたかかりつけ医ではなく、入院設備もあり、外来患者も多い小児科に協力を依頼し、呼吸器症状のある小児からの検体採取と合わせ、ワクチンでの来院等の呼吸器症状のない小児からの鼻咽頭由来検体の採材を依頼し、検出ウイルスの有無、症状との関連について比較検討を行うこととしている。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究では設備、備品は既存のものを使用するが、初年度の検出系の作製や次年度に多数の検体を検査するための試薬や消耗品の購入に多くの予算が必要である。平成24年度に使用しなかった研究費は、平成25年度の試薬、プラスチック製品購入のための消耗品費に充当し、できるだけ多くの検体を検査する。
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