研究課題/領域番号 |
24590839
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研究機関 | 大阪府立公衆衛生研究所 |
研究代表者 |
森川 佐依子 大阪府立公衆衛生研究所, その他部局等, 研究員 (40321939)
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キーワード | 呼吸器ウイルス / 感染症 / 小児科 |
研究概要 |
小児科領域では、急性呼吸器感染症は1年を通じて最も多く認められる疾患であり、原因となるのはほとんどがウイルスであることが知られている。本研究では、迅速性に優れ、重感染の検出も可能なリアルタイムPCRでの呼吸器系ウイルスの検出系を構築し、検出ウイルスについて重感染の有無、症状との関連性などを検討することを目的とする。 1年目となる平成24年度は、リアルタイムPCR法を用いた高感度の検出系を作製でき、血清型別も含め15種のウイルスが検出可能となった。コンベンショナルPCR の系を併用し、PCR 産物の核酸配列を決定することによって、遺伝子型別も実施できる体制を整えた。 2年目となる平成25年度は、小児科病院での呼吸器疾患患者からの検体を用い、上述の検出系にてウイルス検出を行った。2013年4月18日~2014年4月22日までの1年間に合計512検体と、ほぼ予定数の鼻汁検体を検索した。年間を通じ最も多く検出されたのはA群ライノウイルスで、全検体の22%から検出された。A群ライノウイルスの遺伝子配列を比較したところ、複数の遺伝子型が同時期に流行していることがうかがえた。検出結果は毎週還元し、採取医療機関での流行対策に有効活用された。今年度は得られた検出結果と重症度、重感染の及ぼす影響、予後との関連について検討する。また、呼吸器症状を呈さない児からのウイルス検出頻度を調査する目的で、一事業所職員の子供(幼児・学童年齢)から、週1回うがい液を採取しウイルス検出を試みた。2014年6月から1年の予定で行なっており、現在260検体を得ている。症状が認められない期間においても、ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスなどが検出されており、症状のある児からの検出頻度との比較を行うことで、各ウイルスの病原性についても調査できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は小児の呼吸器疾患患者からの検体を用い、1年を通じてどの年齢層からどのウイルスが検出されるか可能な限り多種のウイルスを検索する計画であり、検体数として550検体を見込んでいた。結果として合計512検体を得て、週単位で結果を還元できた。こども病院を協力医療機関としたため、重症度の高い患児の割合が高いことが予想される。従って、呼吸器症状を呈さない児(ワクチン外来児)からの検体も採取すると共に、一事業所職員の子供からも継続した検体採取を行ない、ウイルス検出を試みた。症状の有無を検出されたウイルスごとに比較することで、症状の特長、好発年齢層などが明らかとなる事が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は検出したウイルスと聞き取りデータの解析を行なう。 喘息・重症化とウイルス種・血清型(または遺伝子型)との相関や、重感染と症状との関連性、検出ウイルスごとの好発年齢層について解析する。解析結果は、検体採取医療機関に還元される他、学会における発表、学術誌への投稿を予定している。得られた情報を小児科と共有することで、流行期に対する今後の予防対策、ワクチン開発の優先順位やリスクの把握に役立つと考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
検体採取期間が次年度にまたがるため、試薬などウイルス検出にかかる消耗品費が次年度も必要となった。 ウイルス検出のための試薬、プラスチック製品など消耗品の購入に用いる。
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