研究課題/領域番号 |
24590844
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 公益財団法人先端医療振興財団 |
研究代表者 |
久保田 芳美 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, 研究員 (60403317)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 疫学調査 / 都市部住民 / 動脈硬化予防 / LDL酸化 |
研究概要 |
神戸市一般住民を対象とした都市部住民コホート「神戸トライアル」では、平成22,23年度にベースライン調査を実施し、40~74歳のガン、循環器疾患の既往がなく高血圧・糖尿病・脂質異常症の治療中でない1,134人がコホートに参加した。平成24年度以降は追跡調査の期間となり、コホート参加者にとって1回目の追跡調査を平成24,25年度の間に計画している。平成24年度は、コホート参加者の約半数を対象として追跡調査の一環である来所検査を実施し、食事、サプリメント類摂取、喫煙状況をはじめとする生活習慣情報、QOL指標、動脈硬化性疾患の発症情報等および血液検体を収集した。来所検査の受診率は86%であった。さらに、ベースライン調査で収集したLOX-1系変性LDL指標との関連を検討するため、コホート参加者の検体のうち520件の血中ビタミンE(α,β,γ-トコフェロール)を本研究費および連携研究者らが別途取得した科研費により測定した。血中α-トコフェロール(μg/mL)の中央値は男性11.8、女性12.9、β-トコフェロール(μg/mL):男性0.22、女性0.23、γ-トコフェロール(μg/mL):男性1.05、女性0.96、LOX-系変性LDL指標の1つであるLAB(μg/mL)の中央値は男性23.0、女性24.0と、γ-トコフェロール以外は女性の方が高い傾向を示した。 前年度で終了したベースライン調査に関しては、研究代表者および連携研究者らが研究成果を報告した。LDL-コレステロールの低い日本人においてCRPが心臓足首血管指数(CAVI)に強く関連することを示した原著論文を1報、学会報告ではLOX-1系変性LDL指標であるLABとsLOX-1が健常者の動脈硬化予測因子となる可能性を示した他、ストレス状況に検査時血圧よりも家庭血圧が強く関連することなどについて8報発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コホート研究「神戸トライアル」の参加者は一般市民のボランティア集団である。追跡調査では、コホート参加者の神戸トライアルへの関心が、来所検査への参加率や郵送調査の回答率つまり追跡率を左右することになる。研究代表者と連携研究者らの諸活動により、来所検査への参加率は86%、コホート参加者全員を対象とした郵送調査の返信率は90%と、高い追跡率を維持し、追跡調査のデータおよび血液検体の収集は順調に進展している。コホート維持のための資金を優先する必要があり、検体分析については、計画を縮小せざるを得なかった。しかしながら、ベースライン調査の成果報告が前述の通り得られており、これらは今後の追跡調査結果の分析の基礎情報となる上、神戸市民への研究成果の還元にもつながるため、長期的な視点で見れば順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き追跡調査を継続する。血中ビタミンEについては、未測定分の検体を分析した上で、コホート参加者全員を解析対象として、LOX-1系変性LDL指標との関連について解析する。今後、1) 血中ビタミンE濃度は、従来のLDL-コレステロールよりもLOX-1系変性LDL指標であるLABやsLOX-1、特にそれらのLDL-コレステロールとの比と負の関連を示す 2)血中ビタミンE濃度は、食事、サプリメント類摂取、喫煙状況、運動状況などの生活習慣により異なるかなどについて明らかにする。これら仮説が明らかになれば、脂質異常症などの健康障害が起きていない健常者における生活習慣改善の推進にもつながると考えられる。本年度学会報告した研究成果については、論文作成を進め、コホート参加者向けのニュースレターや一般市民向け情報として先端医療振興財団や神戸市HPなどでの発信を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、残額の182,294円および次年度交付額の1,900,000円(直接経費のみ)の合計2,082,294円となる。追跡調査は当該年度と次年度でコホート参加者全員を一巡するが、検査スケジュール上、当該年度後半に受診分の検体測定の一部やデータ処理を次年度に行う必要がある。研究費は、当該年度末および次年度に検査を受けた者の血液検体の検査料に用いる。検査測定結果だけでなく、検査時に聴取した問診票は、研究メンバーによりデータクリーニングを行った上でデータ入力しデータベース作成するが、そのデータ入力段階の人件費に用いる。さらに、研究の経過や成果を報告するためのニュースレター印刷、発送に用いる。
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