研究課題/領域番号 |
24590845
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸市環境保健研究所 |
研究代表者 |
岩本 朋忠 神戸市環境保健研究所, その他部局等, 研究員 (70416402)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 分子疫学 / ゲノム疫学 / 次世代シーケンサー / 遺伝型別 / SNP / VNTR |
研究概要 |
結核菌集団構造解析の実施においては、その科学的根幹部分をなす遺伝系統別分類の頑健性確保が大前提となる。H24年度は、まずこの点を科学的に検証した。具体的には、比較ゲノム解析から複数の系統群への分岐を齟齬なく反映するSNPセットを特定し、既存の遺伝系統分類との比較を行った。臨床分離株1340株を用いた検証により、従来の遺伝系統分類の不正確さを明らかにするとともに、新たな分類法としてのSNPセットを確立しえた。さらに、解析対象株を中国・韓国・ペルー分離株に適応することで、各国に特徴的な遺伝系統群の分布状況を解明した。現在は、より微小な進化単位での集団構造解析へと展開するため、次世代シーケンサーを用いた全ゲノム情報を活用するための基礎データとして、感染伝播が明確な事例や再発事例での遺伝子変異の出現をゲノムワイドで捉えるべく実験を推進中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自の系統分類マーカーの特定、ならびに、臨床分離株の地域間比較を行った研究成果は既に一流の国際試に掲載されており、初年度の目標は十分に達成されたものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
・全ゲノム塩基配列データの比較を行うことで、結核菌の生活環での微小進化を解明する。すなわち、伝搬・感染・発病 or 不顕性感染からの再増殖への推移における結核菌ゲノム変異の頻度と傾向を解析する。解析対象には、地域内分子疫学調査で特定されたルーツが同一と推定される結核菌株での集団発症や再発病などの事例を選び出す。このような事例検証での微小進化データの蓄積は、全ゲノムデータを用いた分子疫学新時代(ゲノム疫学)での菌株の同一性に関する基盤データとなる。平成24年度にも、次世代シーケンサーによる全ゲノム解析を実施したが、解析のためのケミストリーの進展に伴う低コスト化が急激に進んだため、当初予定額を下回る費用で実験を遂行できた。このため、平成25年度への繰越金が発生したが、本年度の解析により予算執行を行う予定である。 ・結核菌分子疫学をゲノム疫学に昇華させるための科学的検証を行う。過去10年継続してきた地域内(神戸市)分子疫学調査から、遺伝子型別解析でルーツが同一と推定される結核菌株が数年間にわたり感染拡大を繰り返しているケースを複数例経験している。これらの事象について、全ゲノム解析を行うことで、従来の分子疫学解析では追跡不可能であった特定クローン株の伝播様式の解明を試みる。次世代の分子疫学、すなわちゲノム疫学の確立に向けた先行実験として位置付けられるものである。
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次年度の研究費の使用計画 |
複数菌株での比較ゲノム解析を進めるにあたり、必要となる消耗品、培地、分子疫学試薬などの物品費を中心に研究費を使用する(24年度繰越金634,218円+600,000 円)。また、日本細菌学会、日本ゲノム微生物学会、日本微生物生態学会などに参加するにあたり、旅費を計上している (200,000円)。さらに論文投稿、論文別刷り、英文校正に関わる費用、学会参加費を計上している(300,000円)。
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