研究課題
最終年度は,従来の遺伝子型別解析法に対する全ゲノム解析による菌株異同判定の優位性を検証するために,拡張型クラスター形成株について全ゲノム解析を行い,その感染伝搬様式の解明を目指した.具体的には,VNTR解析により同一遺伝子型を示した30株から8株を選定し,全ゲノム解析を行い,各菌株に固有の変異箇所を合計35か所検出した.次に,これら8株で特定された個々の株固有のSNVを残る22株について調べた.その結果,感染拡大株30株は,11株からなるグループ (G1),10株からなるグループ (G2),そして,その他散発的なものに大別された.G1の11株について,それぞれの疫学的関連性を精査したところ,これら11株は特定の職種・職場に勤める者とその家族で構成されることが分かり,これまで感染経路が不明としていた感染拡大株の感染様式の一つが解明された.さらに,G2については,神戸市以外の近隣地域で高頻度に分離される株が同じグループに分類されることが分かった.本成果は,従来の結核分子疫学調査結果を基礎として,ゲノム疫学を組み合わせることで,より詳細な感染伝搬経路の解明を目指すことが出来ることを示し得たもので得ある.研究期間全体を通じて,近年急速に発展してきた次世代シーケンサー (Next Generation Sequencer, NGS)を結核菌の異同判定,系統分類,ならびに感染実態調査に活用し,結核の新たな疫学像の解明を目指した.その成果として,信頼性高く,遺伝系統分類のできる遺伝子マーカーを特定した.また,結核菌の生活環(感染伝搬,休眠)での微小進化の実態を明らかにし,全ゲノム情報を用いた場合の菌株異同判定の基準を設定しえた.また,現在の分子疫学では感染伝搬の実態把握場困難である,拡張型クラスター形成株の詳細な感染伝搬様式を解明しえた.
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