本年度は、マウス線維芽細胞を用いての虚血・再還流試料の再度作成とLC-MS/MSを用いての脂質標品を使った検出条件検討、以前の虚血・再灌流試料を用いての蛍光試薬による過酸化脂質の定量の試みを行った。 マウス線維芽細胞を用いて虚血・再灌流試料の作成を試みたが、従来の条件では細胞死の誘発が困難であった。マウス線維芽細胞に形態的変化は認められなかったものの、長期の保存や数多くの継代により性質が変化した可能性が考えられた。以前に見出した銅イオンを添加して細胞死を誘発させる方法にて試料を作成することとした。この方法においては細胞死が発生した試料とコントロール試料の作成を行うことができた。今後はこれらから過酸化脂質を抽出することとした。 LC-MS/MSを用いた過酸化脂質の分析について、市販のカルジオリピン標品を移動相A:メタノール0.1%酢酸アンモニウム、B:水0.1%酢酸アンモニウムとして、L-Colmonにて分析を行ったが、目標のイオン化質量の部分にピークを認めず、この条件では検出は困難であった。現在はLC-QTOF-MSを用いて分析が可能かどうか検討を行っており、脂肪酸の分析は可能であることが示されたため、カルジオリピンの分析を試みる。 蛍光試薬を用いた過酸化脂質の定量は、以前に作成した試料から、カルジオリピインを分離した。虚血・再灌流試料とコントロールの試料では、虚血・再灌流を行った試料にて産生された過酸化脂質の量は多い傾向を示したが、試料数が少なく、統計による有意差は評価できなかった。 研究機関全体では細胞より過酸化脂質を抽出して、虚血細胞とコントロ-ル細胞でその発生量を比較した結果、虚血細胞で多い傾向を示したが、試料数が少なく統計的有意差を見るまでには至らなかった。LC-MS/MSによるカルジオリピンの分析も困難で、両研究とも今後の継続的な研究が必要である。
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