研究課題/領域番号 |
24590850
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
坂 幹樹 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 技術専門職員 (30447388)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 薬毒物分析 / 液-液抽出 / 構造物性相関 / 予測モデル / 回収率 / 生体試料 / 法医学 |
研究概要 |
本研究における最終目的は“薬物抽出の回収率予測モデル”を作成することにあるが、これには高度なデータ解析を必要とする。よって、平成24年度は、ADMEWORKS/ModelBuilderを用いて定量的構造物性相関(QSPR)解析の習得に努めた。この解析手法によって、どこまで良好な予測ができるのか、また、どこまで現象と化合物の物性を関連付けられるのかを十分理解しておく必要があったためである。ガスクロマトグラフィー(GC)分析において発生するマトリックスエンハンスメント効果のデータから、58化合物のデータを用いてQSPR解析を実行し“マトリックス効果予測モデル”を作成した。この研究の結果は、マトリックス効果を計算によって予測可能にし、“水素結合供与体の数”が重要なパラメータであることを明らかにした。現在、論文を投稿中である。また、QSPR解析を行う上で重要なことがいくつか判明した。まず、当然であるが正確なデータを数多く得る必要がある。作成されたモデルの能力を検証するためには外部検証を行うのが望ましいが、これを行うためには100以上のデータがあった方が望ましいと考えている。次に、データの情報に偏りがないことが重要である。具体的には化合物の構造式に着目し、バラエティに富んだ化合物を集めることがより良い解析のために必要なこととなる。モデル作成に用いた化合物の物性が偏っていたら外部検証の結果が悪くなることが、いくつかのモデルを作成して実感した。 これらの経験を踏まえて、数十種の薬物を購入し、計200種ぐらい保有できた。また、予備実験として、数種類の有機溶媒を用いて薬物が添加された血清から液-液抽出を行ない、GC-MS、LC-MS/MSで測定した。これらの実験から候補となる薬物の選択、抽出法のプロトコール、測定メソッドなどの条件がほぼ決まり、解析に用いるデータを採る準備が整った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
科研費内定前に進めていた“マトリックス効果予測モデル”を仕上げて論文投稿することから始めたので、本科研費における“薬物抽出の回収率予測モデル”に対する具体的な実験に取り掛かるのが遅れてしまった。しかし、どちらの研究も予測モデルの作成という点で共通しており、ADMEWORKS/ModelBuilderを用いた定量的構造物性相関(QSPR)解析を実践する機会として“マトリックス効果予測モデル”は適していた。実験データの収集は遅れているが、どのようなデータが望ましいかをはっきりさせたのは、今後の研究の進展において大きな前進ともいえる。
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今後の研究の推進方策 |
まず、血清サンプルにおける液-液抽出のデータ収集から始める。薬物・有機溶媒・pHをそれぞれ変化させて、添加・回収実験を行い、各薬物の回収率データを蓄積する。また、血清から抽出される夾雑物は今のところ、コレステロールと脂肪酸がメインと考えているが、これらの回収率も同様に算出する。データが収集できたら、定量的構造物性相関(QSPR)解析に移る。物性パラメータの絞り込みが重要な工程となると考えている。ADMEWORKS/ModelBuilderによるQSPR解析と同時並行的に、SIMCAを用いた主成分分析(PCA)などを用いることにより高度な解析が可能となる。“薬物抽出の回収率予測モデル”は、“薬物回収率/夾雑物回収率”を求めるものになるだろう。次に、作成されたモデルに対して検証(バリデーション)を行う。バリデーションの結果が悪い場合は、そのモデルは却下される。最終的に、相関係数などのいくつかの指標に基づいて、最も良いモデルを選択する。モデルの十分な精度が確認されたら、研究をまとめて、学会発表、論文投稿を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬類 30万円、GC-MS交換部品 16万円、LC-MS交換部品 17万円、 超高純度ヘリウム 12万円、超純粋装置交換部品 15万円、 学会旅費 10万円、論文の別刷 10万円
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