研究課題/領域番号 |
24590851
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中嶋 信 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 技術専門職員 (70396696)
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研究分担者 |
吉田 謙一 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40166947)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | オートファジー / 肝臓 / LC3 / 免疫染色 |
研究概要 |
Autophagyは、飢餓、その他のストレスに対応して、細胞構成成分をautophagosome二重膜で囲い込みlysosomeと癒合後、分解し、エネルギーを補い、アミノ酸などを再利用する現象である。最近、autophagyが細胞内の脂肪滴代謝に寄与する可能性が注目されている。脂肪滴形成は、肥満・高脂血症の他、飢餓でも促されることが知られている。 autophagosomeを構成するmicrotubule-associated protein 1 light chain 3 (LC3)は、GFPと結合させて(GFP-LC3)過剰発現すると、免疫組織・蛍光染色法によって、飢餓・ストレス負荷時の、autophagy活性を知ることができる。最近、私達は、通常の免疫染色法を用いて、ヒト肝臓のLC3を再現性よく染色できることを見出した。そこで、肝脂肪化の指標であるAdipose differentiation-related protein (ADRP) の免疫染色と合わせて、飢餓、脂肪化とautophagyの関連性を検討した。 LC3は正常肝の門脈域より中心静脈周囲に強く、顆粒状に染まり、脂肪化に伴って染色性が低下した。LC3-ADRP二重染色によって、小脂肪滴の一部でLC3-ADRPが共存していたが、中等度以上の脂肪肝ではLC3蛍光は軽微で、LC3陽性面積とADRP陽性面積には逆相関を認めた。栄養状態の指標としてBody Mass Index(BMI)を用いて調べると、LC3染色との関連性を認めなかった。 これまで、癌組織において、LC3免疫染色陽性像を示した論文が少数ある。本研究によって、正常肝のLC3免疫染色ができ、脂肪化指標との比較より、はautophagyが脂肪代謝に寄与していること、あるいはautophagyの障害が脂肪化を促していることがヒトにおいて示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの達成度 本研究において、ヒト解剖事例の肝臓において、通常のLC3免疫組織法・蛍光抗体法が使用できることを確立した。この方法を用いて、LC3が中心静脈周囲に顆粒状に発現すること、加齢により生じるリポフスチン顆粒と明確に区別できること、脂肪化の進展とともにLC3染色性が低下すること、死後48時間以内程度の事例の大部分に適用可能であることを見出した。 これらの結果から、オートファジーの障害が脂肪肝の原因の一つであることが確認できた。また、小脂肪滴の一部とオートファジーの関連性をADRPとLC3の二重蛍光抗体法による共局在によって確認したことは、脂肪滴形成にオートファジーが関与している可能性を指摘した報告と矛盾しない。一方、栄養状態の指標であるBody Mass IndexとLC3染色性には相関を認めなかったことから、当初、期待した対象者の栄養状態の客観的な指標としての使用は難しいことがわかった。これらの結果は、Hepatology Reserchに投稿され、現在、改訂作業中であり、受理される見込みである。 これまで、肺癌、脳腫瘍等のガン組織について、LC3免疫染色法に関する報告が少数あったが、正常組織に関する体系的な検討は本研究が最初である。今後、肝疾患、加齢、中毒等との関連性に関する客観的な証拠を解剖体から得る重要な手段となる可能性がある。以上、ヒト肝臓にLC3免疫組織を使用できるかを検討するという第1の目的は完全に達成され、脂肪肝との関連性も、ほぼ確認できた。しかし、高脂肪食(High Fat Diet)やMDMA等、脂肪肝を惹起する動物モデルにおける検討はされておらず、今後の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方針 ラットに高脂肪食を負荷する、あるいは3,4-methyledioxymethyl-amphetamine(MDMA)投与する等、脂肪肝を惹起する動物モデルを確立する。そして、その肝臓の脂肪滴形成におけるオートファジーの役割を検討する。 既に、高脂肪食ラットの脂肪肝を確認している。脂肪負荷後、経時的に採取した肝臓について、LC3染色、及びADRP染色を試み、染色法の至滴条件を検討する。その上で、LC3-ADRP二重蛍光法を確立して、脂肪肝の進行とLC3染色の関連性を、領域性、脂肪滴の大きさ、脂肪肝の程度等の視点から検討する。一方、肝臓のWestern blot解析によって、オートファジー活性化の指標である、LC3II/LC3I比を算出し、脂肪化の指標であるADRP発現量との関連性を、経時的に検討する。そして、オートファジー阻害剤であるクロロキン等を投与したとき、LC3II/LC3I比、ADRP量に及ぼす影響、LC3-ADRP二重免疫蛍光の共存在度、ADRP蛍光強度、ADRP陽性面積を調べ、オートファジーが脂肪滴形成に寄与するか否かを検討する。 当教室においては、睡眠時無呼吸(Sleep Apnea Syndrome, SAS)のモデルであるIntermittent Hypoxia (IH)を飼育箱の中のラットに持続的に暴露できる装置を開発した。これを用いて、高脂肪食負荷したラットをIH暴露して、オートファジーと脂肪形成の関連性を検討する。また、エコー等を用いて、心機能を評価する。これによって、脂肪肝を有するSAS患者の心機能低下の可能性、SASが脂肪肝や肝障害に及ぼす影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費 300,000円 動物購入費、 100,000円 組織検査用試薬、 100,000円 抗体購入費、 100,000円
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