オートファジーは、飢餓、その他のストレスに対応して、細胞構成成分をオートファゴソームの二重膜で囲い込みライソゾームと融合し、分解してエネルギーを補い、アミノ酸などを再利用するシステムである。近年、オートファジーが脂肪滴代謝に寄与する可能性が注目されている。脂肪滴形成は、肥満、高脂血症、飢餓などでも促進することが報告されている。 オートファゴソームを構成するmicrotubule-associated protein 1 light chain 3 (LC3)は、免疫組織染色によって、飢餓、ストレス負荷時のオートファジー活性を知ることができる。私たちは、最近、通常の免疫染色を用いて、ヒト肝臓のLC3をよく染色できることを見出した。そこで、肝臓の脂肪化の指標であるAdipose differentiation -related protein (ADRP)の免疫染色と合わせて、飢餓、脂肪化、オートファジーの関連性を検討した。 その結果、LC3は正常肝臓の門脈域より中心静脈周囲に、強く顆粒状に染まり、脂肪化に伴って染色性が低下した。LC3とADRPの二重染色によって、小脂肪滴ではLC3とADRPは共存していたが、中等度以上の脂肪肝ではLC3は軽微で、LC3陽性面積とADRP陽性面積には逆相関が認められた。栄養状態の指標であるBody Mass Index (BMI)を用いて、LC3との関連性を調べたところ、相関は認められなかった。 本研究によって、正常肝細胞のLC3免疫染色が可能となり、脂肪化指標のADRPとの比較により、オートファジーの障害が肝臓の脂肪化を促進していることが示唆された。
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