研究課題/領域番号 |
24590852
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
畑 由紀子 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (30311674)
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研究分担者 |
西田 尚樹 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (10315088)
木下 耕史 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 助教 (10585920)
森 寿 富山大学, 大学院医学薬学研究部(医学), 教授 (00239617)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 心臓性突然死 / イオンチャンネル / 遺伝子変異解析 |
研究概要 |
死亡時の状況、解剖や解剖後の病理組織検査などでも致死的な病変が認められない心臓性突然死疑いの法医剖検例について、イオンチャンネル遺伝子の網羅的な遺伝子変異解析を行っている。その結果、7例 (25.9%) は変異なし、18例 (66.7%) は変異ありで1症例につき1~5個のcSNPを認め、残り2例 (7.4%) は新規変異を認めた。新規変異のうちHERG (M579fs+75x hetero)について、機能解析を行ったところdominant negative効果を示さなかったが、変異体の蛋白発現量は野生型に比べ非常に少なく、細胞表面上はほとんど野生型であったことなどからナンセンス変異依存mRNA分解(NMD)機構により変異体ができないhaploinsufficiencyになっていることが推察され、このことが突然死に一部関与したのかもしれないことを報告した。 このように心臓性突然死症例には、イオンチャンネル遺伝子変異が潜在しているが、機能異常の程度は軽い例が多いと推察される。これは生前の主たる病歴もなく生来健康であったことにも関連すると考えられる。これまで法医剖検例において、網羅的な遺伝子変異スクリーニングはほとんど行われておらず、病歴もなく死因につながる明らかな病理所見のみつからない剖検例についての遺伝的背景をまとめた報告は少ない。突然死に関わる遺伝子異常の種類や頻度、その機能異常の程度が明らかになれば、法医解剖の重要な課題である死因究明の質を大きく向上させることができる。また、突然死の予防にも繋がり社会への貢献にもなる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心臓性突然死疑いの剖検27例について、イオンチャンネル遺伝子の網羅的解析を行った。また、一部の症例に関してはサルコメア遺伝子についても解析を行っている。この結果得られたイオンチャンネル遺伝子の新規変異について、機能解析を行い遺伝的背景について考察した学会発表を行うことができ、論文も投稿中であるため。
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今後の研究の推進方策 |
前年度同様、法医剖検例のなかで心臓性突然死の疑いのあった症例について、解剖所見、病理組織所見、病歴及び家族歴について検討を行う。イオンチャンネル遺伝子変異、サルコメア遺伝子変異に関して、網羅的な遺伝子解析を行う。これまで報告されている遺伝子変異の頻度、種類に関して比較検討する。さらに新規遺伝子変異については、イオンチャンネル機能あるいはサルコメア蛋白の機能にどの程度影響しているのかをパッチクランプ法あるいは心筋の伸展性やCa感受性を検討することによって明らかにし症例数を増やす。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度では、研究はおおむね順調に達成しているが、次年度使用額(b-a)が27,690円が生じた。 次年度の使用計画は、遺伝子解析用にsequcencing kit、DNA抽出・精製キットなど、機能解析用に細胞培養用の培地など、病理標本作製に必要な染色液などの消耗品を申請している。情報収集および学会発表のため国内旅費を申請している。
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