研究概要 |
昨年度に続いて死亡時の状況,解剖や解剖後の病理組織検査などでも致死的な病変が認められない心臓性突然死疑いの法医剖検例について,イオンチャンネル遺伝子及びサルコメア遺伝子の網羅的な変異解析を行った. 当該年度は新たに18症例についてイオンチャンネル遺伝子(KCNQ1, hERG, SCN5A, KCNE1, KCNE2, SCN4B)解析を実施した.そのうち2症例に新規アミノ酸変異を認めた.SNPsを認めた症例のうちの4症例には不整脈感受性SNPsを認め,そのうち1例には2つの不整脈感受性SNPs (hERG_K879T / SCN5A_R1193Q)を有していた.新規変異 KCNQ1_ G626_P631del (ΔGSGGPP) について,全血からcDNAを作製しRT-PCR法を用いて発現量の解析を行ったところ,WT allele及びmutant allele両方からほぼ等量の転写物がFragment解析により確認された.もう1つの新規変異 SCN5A_I723Vについて,in silicoにより”有害”の程度予測したところ,PolyPhen2 ; “Damaging” (0.02), SIFT ; “Benign” (0.001)であった.また,昨年度見つかった新規 HERG (M579fs+75x hetero)ついて,RT-PCRによる発現解析,免疫染色による細胞内局在及びパッチクランプ法による機能解析を行った結果と考察についてまとめ論文報告した.病理組織学的にわずかな心筋異常を認めた症例についてはサルコメア遺伝子解析(MYH7, MYBPC3, TPM1, ACTC1, TNNT2, TNNI3)を行ったが,いまのところアミノ酸置換を伴った遺伝子変異は認められていない.
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