研究実績の概要 |
昨年度に続いて死亡時の状況,解剖や解剖後の病理組織検査などでも致死的な病変が認められない心臓突然死疑いの法医剖検例について,イオンチャンネル遺伝子及びサルコメア遺伝子の網羅的な変異解析を行った.また,これまでの成果について,学会発表,論文報告を行った. これまでSCD 38症例について,チャネル異常症の主な遺伝子(KCNQ1, KCNH2, SCN5A, KCNE1, KCNE2, CAV3, SCN4B)及び心筋症の主な遺伝子(サルコメア遺伝子_MYH7, MYBPC3, TNNT2, TPM1, ACTC1, TNNI3)についてdirect sequence法を用いて遺伝子解析を行った.その結果,4症例に新規アミノ酸変異,12症例にはarrhythmia susceptibility SNPsを認め,症例のおよそ1/3に主なチャネル異常症の遺伝子変異あるいはarrhythmia susceptibility SNPが潜在していること及び複数の遺伝子異常の関与について報告した[ISLM, 2014, Hata et al].また,新規アミノ酸変異KCNH2_G487Rについてパッチクランプ法による機能解析及び変異タンパク質の生化学的解析を行い傷害性について報告した[ISLM, 2014, Kinoshita et al].またサルコメア遺伝子については,MYH7及びMYBPC遺伝子変異(既知)を6例に認めた.現時点ではSCD症例の残り2/3は,原因不明である.検索していないチャネル異常症や心筋症の遺伝子(direct sequence法では遺伝子解析が困難であった大きなタンパク質の遺伝子(RYR2, ANK2など)やサルコメア以外のデスモゾーム,Z帯,核ラミナ,中間フィラメントなど構造タンパク質の遺伝子)の関与と同時に複数の遺伝子の相互作用がSCD発症をもたらす可能性が示唆された. また,法医剖検例から得られた心臓突然死症例において左冠状動脈主幹部のまれな起始部異常をもっていた症例についての病理学的検討に関する英文症例報告も行った.
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