研究課題/領域番号 |
24590864
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
一杉 正仁 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (90328352)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 胸部損傷 / 胸郭 / インパクトバイオメカニクス / 加速度 / 高齢 / 動物実験 |
研究概要 |
緒言:高齢者における交通事故による胸部損傷を予防するためには、高齢者の胸郭特性を理解する必要がある。若年者と高齢者の胸郭特性の違いを明らかにするためにラットを用いた生体工学的研究を行った。 方法:シートベルトを着用した自動者乗員が事故時に外力を受けるモデルとして、台上で腹臥位にしたラットに、深麻酔下で加速度を作用させた。その際に、台、ラット胸骨部、脊椎部にかかる加速度を経時的に測定した。また体内の損傷を予測するために、胸腔及び腹腔内圧を計測した。本年度は、まず高齢者のモデルとして、週齢1年6ヶ月以上のウィスターラットを用いて検討を行った。各ラットにつき、加速度を22~107m/s2の範囲で任意に与え、その際の各パラメーターを計測した。なお、一つの加速度につき5回測定を繰り返した。 結果:使用したラットは1年7ヶ月~2年1ヶ月齢で体重は550g~930gであった。例えば、週齢1年10ヶ月のラットを載せた台に平均で26.4 m/s2の加速度を作用させたところ、胸骨部の加速度は22.4 m/s2、脊椎部の加速度は9.6 m/s2であった。この加速度の差は、胸郭のたわみによると考えられた。ラットの体重の違いを考慮して、体重を利用したスケーリングテクニックによって補正したところ、各個体の胸郭特性に大きな差がないことがわかった。すなわち、老齢ラットにおける胸郭の力学特性が明らかになった。また、内臓損傷の有無を調べるために剖検を行ったが、今回作用させた加速度の範囲では内臓損傷はみられなかった。 考察:胸郭のたわみは力学的にバネモデルで近似できると考えられた。したがって、胸部損損傷をモデル化することで、かかる加速度と胸郭変形の関係が明らかになると思われる。今後は胸部変形量を算出し、さらに胸腔内圧と腹腔内圧の関係を明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
シートベルトを着用した自動車乗員が、事故時に胸部に外力を受ける状況について、動物実験でモデル化することができた。まずは、この実験系が構築できたことで研究を円滑に進めることができたと考える。また、高齢者を対象とした研究に特化するため、老齢ラットを入手して実験できたことも有益であった。データはほぼ予定通りに得られたが、得られたデータを工学的に解析する時間的余裕がなかった。したがって、おおむね順調に進展していると判断した。次年度は時間配分を改めて研究を進めていきたい。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究で、胸部変位量を明らかにする必要があると思われた。特に、ダミーを用いる自動車衝突試験では胸部の変位量を計測し、安全の指標としている。そこで、得られた加速度を2回積分して胸部と脊椎の変位を算出し、胸部変位量と、胸腔内圧や腹腔内圧との関係を検討したい。 次に、胸郭の特性をさらに正確に調べるために、準静的圧迫試験を行い、胸郭の変形量とかかる力との関係を明らかにする。以上、得られた老齢ラットのデータを人間に外挿し、高齢者の胸部特性にはどのような特徴があるかを具体的に明らかにする。 次に、同様な取り組みを若齢ラットで行う。若齢ラットは4ヶ月齢までのラットを用いるが、老齢に比して体重が低いため、昨年同様スケーリングテクニックで補正を行う。得られたデータを老齢ラットにおける値と比較したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
まずは前年度の研究で課題となっていた、データの工学的解析について、専門家の助言を得ながら薦めたい。したがって、旅費や交通費、図書費として使用したい。 次に、前記のように若齢ラットを対象として同様研究を行うため、実験動物関連の諸費用を消耗品として使用する予定である。 また、今回得られた成果をまとめて、関連学会で発表し、諸家の意見を伺いたい。したがって、学会参加目的で旅費を使用したい。
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