昨今、ナノ粒子やナノマテリアルの開発が急速に進み、アクシデンタルな曝露や日常的に体内に取り込む可能性が考えられる。繊維状ナノマテリアル(アスベストやカーボンナノチューブなど)の吸入暴露が原因となり引き起こされる肺の疾患に、炎症反応の制御機構の一つであるNLRP3インフラマソームが関与することが知られている。今までに実験にて繊維状ナノマテリアルにより誘導されたNLRP3インフラマソーム機構にGTP effectorであるRho-kinases (ROCKs)が関与することを培養細胞株を用いて明らかにした。平成25年度は、今まで明らかにした機構をヒト血液中単球由来マクロファージを用いてさらに検証を行った。その結果、NLRP3インフラマソーム機構へのROCKsの関与は、培養細胞のみならずヒト初代培養マクロファージにおいても証明された。今後はさらに、NLRP3インフラマソーム経路におけるROCKsによる阻害機構の詳細な解明が必要になる。 使用禁止になったアスベストの代替品として建築資材に用いられている繊維状粒子の一つとしてロックウール(man-made vitreous fibers 10)がある。次の実験として、ロックウールがNLRP3インフラマソームを誘導するか調べた。THP-1細胞を用いてNLRP3インフラマソームの最終産物であるInterleukin-1betaの分泌量を調べた結果、ロックウールはアスベストやカーボンナノチューブに比較するときわめて弱い誘導物質であることが明らかとなった。 これらの繊維状ナノマテリアルの毒性発現機序解明の研究により、さらなる発展が必要となるが、今後の繊維状ナノマテリアルの曝露時の治療や発症遅延にも貢献するたいへん貴重なデータが得られたと考えられる。
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