研究課題/領域番号 |
24590871
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
松末 綾 福岡大学, 医学部, 助教 (70309920)
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研究分担者 |
久保 真一 福岡大学, 医学部, 教授 (10205122)
原 健二 福岡大学, 医学部, 講師 (00090738)
柏木 正之 福岡大学, 医学部, 助教 (70301687)
ウォーターズ ブライアン 福岡大学, 医学部, 助教 (00609480)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 法医学 / 遺伝子変異 / 突然死 |
研究概要 |
原因不明の乳幼児突然死症例8剖検例において、致死的遺伝性不整脈の原因遺伝子であるSCN5A並びにRYR2遺伝子の変異を探索した。SCN5A 遺伝子は、アミノ酸をコードしているエキソン2から28の塩基配列の解析を行った。RYR2遺伝子は、高多型領域であるhot spot 領域について解析を行った。それぞれのエキソンを増幅するようにプライマーを設計し、PCRで増幅後、ダイレクトシークエンス法で翻訳領域の変異を探索した。さらに、先天性脂肪酸代謝異常症の原因遺伝子であるCPTII並びにVLCAD遺伝子における変異を探索した。CPTII遺伝子は、兼岡らの方法に従い、全てのエキソンの変異を探索した。VLCAD遺伝子は、全てのエキソンについて、イントロンにプライマーを設計し、PCRを行い、ダイレクトシークエンス法で変異を探索した。 乳幼児突然死症例8例中2例において、SCN5A 遺伝子のエキソン20にヘテロ接合体変異R1193Qが認められた。R1193Qにより、Na チャネルの不活性化がおこることが報告されているため、不整脈を起こした可能性があると考えられた。8例中2例において、RYR2 遺伝子に、過去に報告のない変異が認められたが、いずれもタンパク質の機能変化に影響はないものと予測された。CPTII 遺伝子では、1例においてヘテロ接合体変異 F352Cを認めた以外は活性変化を伴わない変異であった。F352Cは、通常の体温の場合、活性に変化は認められないが、40度の高温になると、活性が大幅に低下することが報告されている。今回F352Cが認められた症例は、体温の上昇は認められていないので、この変異の影響はないものと考えられた。また、VLCAD 遺伝子に活性変化を伴う変異は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
原因不明の乳幼児突然死症例8剖検例において、致死的遺伝性不整脈の原因遺伝子と先天性脂肪酸代謝異常症の原因遺伝子の変異を探索し、いくつかの変異を確認した。また、今回確認した変異について、過去の文献や、Polyphen-2, SIFT等の機能変化予測ツールを用い、変異の影響を考察することができた。今回確認したSCN5A遺伝子の変異R1193Qについて、交付申請書に記載したQP法による簡便な検出法の確立を目指したが、当大学にあるリアルタイムPCRでは、QP法による検出は困難で、同時検出も不可能であった。よって、TaqMan 法による検出法を確立することとした。今年度は、検出法がまだ確立できていないため、達成度はやや遅れていると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後も原因不明の突然死症例を集積していく。集積した症例について、遺伝性致死性不整脈の原因遺伝子の変異を探索する。検出された変異について、過去の文献や、Polyphen-2, SIFT等の機能変化予測ツールを使用し、タンパク質への影響を推定し、死因との因果関係を考察する。 検出された変異について、TaqMan 法による簡便な検出法を確立する。さらに、確立した方法を用いて、日本人における変異の頻度調査を行う。変異を探索後、頻度を計算し、データベースを作成する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は、QP法を確立できなかったため、日本人における集団頻度調査ができなかった。そのため、予定していた多検体検査に必要な試薬、備品を消耗しなかったため、繰越金が生じた。次年度は、QP法に変わる別の判定方法であるTaq Man 法を確立し、日本人における集団頻度調査を行う予定である。その為、多検体検査に必要な、TaqMan PCR、シークエンス等の試薬、備品を購入する予定である。また、英語論文校正の費用が必要であると考えている。
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