研究課題/領域番号 |
24590871
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
松末 綾 福岡大学, 医学部, 助教 (70309920)
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研究分担者 |
久保 真一 福岡大学, 医学部, 教授 (10205122)
原 健二 福岡大学, 医学部, 講師 (00090738)
柏木 正之 福岡大学, 医学部, 助教 (70301687)
ウォーターズ ブライアン 福岡大学, 医学部, 助教 (00609480)
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キーワード | 法医学 / 突然死 / 遺伝子変異 |
研究概要 |
ヒト心筋ナトリウムチャネルαサブユニット遺伝子であるSCN5A遺伝子は、遺伝性致死性不整脈の原因遺伝子である。突然死剖検例におけるSCN5A遺伝子の変異を探索したところ、心臓突然死で死亡した可能性のある剖検例1例並びに乳幼児の突然死剖検例2例において、ヘテロ接合体変異 R1193Qが認められた。この変異は、過去にBrugada症候群とQT延長症候群の患者に認められており、in vitroの実験系でナトリウムチャネルの不活性化を促進することが報告されている。R1193Q変異について、日本人、中国人、アフリカ人並びにドイツ人集団における頻度調査を行った。日本人、福岡(200)、宮崎(199)、鹿児島(202)、沖縄(196)、壱岐(84)、対馬(106)、五島(184)、鳥取(103)計1274人、中国人(無錫)119人、アフリカ人68人(ナイジェリア31人、ガーナ37人)並びにドイツ人(ミュンヘン)94人の血液から常法に従ってDNAを抽出した。シークエンスにより既に型が判明している検体を用いて、TaqMan法並びにAPLP法でタイピングを行ったところ、シークエンスの結果と一致したため、TaqMan法並びにAPLP法で正確な判定ができていると判断し、これらの方法で集団頻度調査を行った。 変異型alleleの頻度が最も高かったのは中国の無錫で、0.0714であった。福岡、宮崎、鹿児島、対馬、五島における変異型alleleの頻度は0.05から0.06程度であったが、壱岐は0.0298、沖縄は0.0153と頻度が低かった。アフリカ人、ドイツ人では変異型alleleが認められなかった。R1193Qはアジア人に特異的な変異である可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
原因不明の突然死剖検例において確認されたSCN5A遺伝子のR1193Q変異について、集団頻度調査を行うことができた。当初予定していたQP法での検出は不可能だったものの、それに代わる方法としてTaqMan法とAPLP法を確立し、正確な型判定を行うことが可能となった。TaqMan法とAPLP法を用いて集団頻度調査を行い、当初予定していた日本人における頻度調査だけでなく、中国、アフリカ、ドイツ人集団における頻度調査も行い、 R1193Q変異がアジア人特異的である可能性を示唆することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も原因不明の突然死症例を集積し、遺伝性致死性不整脈の原因遺伝子の変異を探索する。探索された変異について、過去の文献やPolyphen-2、SIFT等の機能変化予測ツールを使用し、タンパク質への影響を推定し、死因との因果関係を考察する。 検出された変異について、TaqMan法やAPLP法による簡便な検出法を確立し、集団頻度調査を行う。また、他の民族集団のDNAを集積し、より大規模な集団頻度調査を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していたQP法よりも、より安価なAPLP法の確立により、低予算で集団頻度調査を行うことができた。そのため、多検体検査に必要な試薬、備品の購入費用が予定よりも抑えられたため、繰越金が生じた。 平成26年度は、当初予定していた日本人だけでなく、他民族における集団頻度調査を数多く行う予定である。そのため、多検体検査に必要な試薬、備品を購入予定である。また、データ解析に必要なパソコンを購入予定である。さらに、最終年度であることから、研究を総括し、発表するために、英語論文校正、学会発表等の費用が必要であると考えている。
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