研究課題
死因究明のための薬物検査は、中毒関連のみならず、疾病中の治療薬、一般医薬品、濫用薬物など広範な薬物をある程度の微量レベルで検出できることが望まれる。また、結果が迅速に得られることが求められる。本研究では、迅速な試料処理ならびに測定時間の短縮を確立することが目的であった。平成24年度から平成25年度までの2年間に、剖検試料の特徴である大量に含まれる脂質の除去についての基礎的な試みを行い、その解決法の目途がつくところまで達成していた。平成26年度は、その基礎的な実績をもとに、試料調製法の確立、実務化を検討した。その研究の中心は、1.脂質の除去、2.GC-MS測定のためのカラムの選択、3.実務応用可能性の評価である。1.脂質の除去については、イオン交換抽出カラムと液液分配を組み合わせた方法を本研究独自で開発することができた。2.GC-MS測定カラムの選択は、我々が開発した2つの短いキャピラリーカラムをつないだ高速システムに適することを基準とした。その結果、塩基性薬物には5%-フェニル-ポリシルフェニレンシロキサン系、酸性薬物にはトリフルオロプロピルメチルポリシロキサン系が良好であった。3.実用化に向けて、剖検試料の検査への応用で検討している。死体が置かれた環境は、様々で、含まれる脂質の量、種類も異なるため、GC-MSでは組織のマトリックスの影響も、様々であった。試料調製の各段階で、pHを調整することにより、除脂質の再現が高まった。GC-MS、LC-MS/MSを組み合わせることで、一般的な薬物のスクリーニングにおいては、解剖所見などから問題がないように評価され、本試料調製法は実用的と言える。
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J Toxicol Pathol
巻: 28 ページ: 33-36
法医学の実際と研究
巻: 57 ページ: 29-34