研究課題
未治療のIBS症例27例(女性13例、平均年齢22歳)および健常者33例(女性15例、平均22歳)を対象とした。被験者の臨床症状重症度をIBS severity index (IBSSI)を用いて評価した。生理検査では先端に最大容量600mLのバロスタットバッグが装着されたカテーテルを経肛門的に挿入し、直腸内に留置した。直腸伸展刺激圧を40 mmHgまで段階的に増加して直腸痛覚閾値を測定した。その後、少なくとも30分間以上の安静後、コルチコトロピン放出ホルモン(corticotropin-releasing hormone: CRH)2μg/kgを経静脈的に投与した。さらに120分間安静の上、CRH投与前、CRH投与15、30、60、120分後における血中コルチゾールならびにACTH濃度を測定した。IBS症状重症度スコアはIBS群が健常群よりも有意に高値を示した。IBS群では直腸痛覚閾値が有意な低下を認めた(median 28 mmHg vs. 40 mmHg, p<0.01)。CRH静脈投与によって血中コルチゾールならびにACTH濃度は投与前と比較してIBS群、健常群ともに有意な増加を認めたが、その反応性は両群間で有意な違いを認めなかった。大腸バロスタット検査を用いてIBS症例の直腸痛覚閾値を評価した。その結果、IBS症例は健常者に比較して内臓過敏性を示した。一方、末梢CRH静脈投与によって血中コルチゾールならびにACTH濃度が上昇したが、その反応性はIBS症例と健常者で有意な違いを認めなかった。以上より、内臓知覚過敏を認めるIBS患者の視床下部-下垂体-副腎皮質系における刺激反応性は必ずしも亢進していないかもしれない。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、IBS患者ならびに健常者の募集を行い、予定通りに生理検査を実行することができた。加えて、CRH負荷試験によってストレス応答に重要な役割を果たすと考えられる視床下部-下垂体-副腎皮質系の反応性を評価することができた。
最終年度の平成27年度は、当初の計画通りIBS患者のストレス応答について詳細な解析を実行する。すなわち、IBS患者と健常者のCRH負荷刺激による消化管生理学的反応性(消化管運動ならびに内臓知覚)の変化を経時的に分析する。さらに、IBS症状重症度、血中コルチゾール/ACTH濃度、過去のストレス体験の度合い、幼少期における親の養育行動、現在の自覚ストレス度、不安・抑うつ症状がそれぞれどのようにIBSのストレス応答の病態に寄与しているかについて多変量解析を用いて分析する。
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