高齢者に特有な老年疾患、老年症候群の成因について、慢性炎症および老化を基盤としたinflammaging (inflammation + aging)という新たな概念で理解されつつある。その一方で虚弱(フレイル)、転倒、寝たきり、自立度低下などの原因として重要な加齢性筋減少症(サルコペニア)に関して、その病態、分子機序やサルコペニアの予防・治療に向けたアプローチについて未だ確立するに至っていない状況である。フレイルの主要な要素でもあるサルコペニアの発症機構とビタミンDをはじめとする核内受容体リガンドや栄養(分岐鎖アミノ酸)介入、運動介入などを介したサルコペニア発症・進展抑制機構を明らかにすることを目的として研究を行った。In vitro実験系では主に培養系骨格筋細胞を用いて、ビタミンDや性ホルモンによるサイトカイン発現制御など、炎症・老化制御作用、筋分化誘導作用の可能性についてそれぞれ遺伝子レベル、細胞レベルで解析し、ビタミンDなどの核内受容体リガンドを介した炎症制御の可能性が示された。またin vivo系においては疾患・老化モデルマウスとして、後肢懸垂マウス、精巣摘除後マウス、SAMP8マウスなどを用いて、ビタミンDや分岐鎖アミノ酸などを投与した際の全身・骨格筋レベルでの抗炎症作用や骨格筋をはじめとする体組成に関する解析を行い、同介入によるサルコペニア予防・治療の可能性が示された。
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