研究課題/領域番号 |
24590879
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
門脇 真 富山大学, 和漢医薬学総合研究所, 教授 (20305709)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 樹状細胞 / 遊走 / 漢方薬 / 探索研究 / 創薬研究 / アレルギー / 自己免疫疾患 / 炎症性疾患 |
研究概要 |
生体のバランスに重きを置く薬物治療体系である漢方薬は、必然的に免疫系を主要な治療標的としている。漢方薬は永年の人類の叡智による薬効付帯情報を有する創薬リソースであり、臨床予測性の高い新規創薬シーズが見出される可能性は高い。 樹状細胞は、「免疫応答の司令塔」としてその機能を発揮するためには、適切なタイミングで適切な場所へ遊走することが非常に重要であるが、これまで時空間的な樹状細胞機能の研究は少なく、創薬研究の報告も殆どない。本研究では、自己免疫疾患やアレルギー疾患、感染症などとの関連が明らかにされつつある形質細胞様樹状細胞(pDC)に着目し、漢方薬のpDC機能(遊走能を中心として)に対する作用を明らかにして、漢方薬治療の臨床医学的合理性を科学的に検証する。さらに、漢方薬をリード方剤や創薬リソースとして活用し、より有用な新規治療薬や新規方剤の開発という臨床予測性の高い創薬研究に繋げることを目的とする。 86種類の漢方方剤の中で、白虎加人参湯がCCL21によるpDCの遊走に対し抑制効果を示し、四物湯が亢進効果を示した。白虎加人参湯は、CCL21刺激によるpDCの遊走能に対し、移動速度及び移動方向性を共に強力に抑制した。アトピー性皮膚炎患者では患部においてpDCの増加が報告されている。従って、白虎加人参湯のアトピー性皮膚炎に対する治療効果には、pDCの遊走に対する抑制作用が深く関与していると考えられる。さらに、白虎加人参湯の有効生薬の検討により、特に石膏がpDCの遊走能を抑制することを明らかにした。 また、約100種類の漢方方剤含有化合物の探索研究では、curcuminなど5種類の化合物に強力な樹状細胞の遊走抑制作用を見出した。化学構造の異なる漢方方剤含有化合物に比較的低濃度(1μM)での遊走抑制作用が認められ、漢方方剤含有化合物に創薬シードを見出す可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一般的に、免疫担当細胞は遊走能を持つが、特にプロフェッショナルな抗原提示細胞である樹状細胞は、リンパ球へ抗原提示を行うため、付属リンパ節やリンパ球領域へ遊走して獲得免疫応答を惹起すると共に、自然免疫応答を行うため、感染組織等へ速やかに遊走し、I型インターフェロン等を分泌する。従って、樹状細胞はがその機能を発揮するためには、「適切なタイミングで適切な場所」へ遊走する時空間的な解析を行うことが非常に重要となってきている。 しかしながら、これまで、「樹状細胞細胞の遊走」という視点からの樹状細胞機能の研究は殆どなく、遊走能をスクリーニングや薬効評価に取り入れて、創薬研究を行った報告も殆どない。また、樹状細胞のサブタイプである形質細胞様樹状細胞は自己免疫疾患やアレルギー疾患、感染症などとの関連が明らかにされつつある。 本研究で、最も重視している形質細胞様樹状細胞に対する遊走抑制作用のスクリーニングで、86種類の漢方方剤、約100種類の漢方方剤含有化合物の中から、化学構造の異なる5種類の漢方方剤含有化合物に比較的低濃度(1μM)で遊走抑制作用が認められ、漢方方剤含有化合物に創薬シードを見出す可能性が示唆されたことは大きな成果と考える。
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今後の研究の推進方策 |
効果のあった漢方薬関連薬剤(漢方方剤および漢方方剤含有化合物)の作用機序を検討すると共に、樹状細胞機能に対する作用プロファイルにより、適応が推定されるマウス免疫性疾患病態モデルで治療効果を検討する。 (1) 漢方薬関連薬剤の樹状細胞機能に対する作用プロファイルの検討 ①樹状細胞の貪食能に対する作用②樹状細胞の成熟化に対する作用③樹状細胞のヘルパーT細胞の増殖能に対する作用④樹状細胞のエフェクターヘルパーT細胞サブセット(Th1/Th2/Th17/Treg)への分化制御能に対する作用 (2) 漢方薬関連薬剤の病態モデルでの有効性の検討 漢方薬関連薬剤のDC機能に対する作用プロファイルにより、マウス免疫性疾患病態モデル(炎症性腸疾患、食物アレルギー、腸管感染症、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾癬、全身性エリテマトーデス、関節リウマチなど)を適切に選択し、その有効性を検討する。特に、形質細胞様樹状細胞がその発症や病態形成に関与する自己免疫関連疾患への効果を検討する。病態モデルとして、pristaneなどの薬剤あるいは関節リウマチ自然発症モデル(自己免疫疾患モデル)SKGマウスと通常の免疫性疾患病態モデルを組み合わせて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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