研究課題/領域番号 |
24590882
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊東 範尚 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (00621757)
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研究分担者 |
樂木 宏実 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20252679)
大石 充 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50335345)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 睡眠呼吸障害 |
研究概要 |
睡眠呼吸障害(SDB)は高血圧の危険因子であると同時に、さまざまな心血管疾患に合併することが知られており、その発症伸展に重要な役割を果たしている。また精神活動や認知機能にも影響を及ぼし、SDBがアルツハイマー型認知症や血管性認知症に合併するという報告もある。 本研究の目的は①日本人を対象としてSDBの心血管疾患や認知症への関与を前向きに検討すること②CPAPの心血管疾患や認知症への治療効果を前向きに検討すること③認知症発症・進行時の遺伝情報の発現制御(エピジェネティクス)について詳細な検討を行うことである。 現在、当院の高血圧パス・もの忘れパス・SDB精査入院の患者を対象として血圧・血液・尿・筋力等を検査し、画像検査等で心血管疾患の検索を行い、認知機能や抑うつ状態を質問表などを用いて評価している。その上で簡易睡眠検査やポリソムノグラフィーを用いてSDBの状態を評価している。また、必要と考えられる患者に持続陽圧呼吸(CPAP)療法を導入し、その後の経過もfollowしている。 各検査機器や治療機器の取り扱い・管理に習熟し、滞りなく施行できている。当院でのプレリミナリーの検討や既報で予測したとおり、難治性高血圧患者の睡眠呼吸障害合併率が高かった。さらにCPAPの導入により夜間血圧がriser typeやnon-dipper typeのような心血管リスクが高いpaternからdipper typeのようなリスクの低いpatternに変化することを確認した。また、軽度認知機能低下を有する睡眠呼吸障害患者へのポリソムノグラフィー検査やCPAP導入が可能であることも確認し、検査・加療を開始している。 このようにSDBの各疾患への関与とCPAPの治療効果を前向きに検討するとともに横断研究も行っている。遺伝情報の発現制御(エピジェネティクス)の解明についても取り組み中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
病棟の再編成が行われた際、一時的に高血圧パスやもの忘れパスが中止となり、睡眠呼吸障害の精査目的患者を中心に検査を行なうこととなったため対象者が減少した。また、当科が睡眠呼吸障害の検査・加療を行なっていることの近隣医療機関や患者への周知が進まず、紹介患者が予想より少なかった。その結果、現時点で睡眠簡易検査50例程度、ポリソムノグラフィー検査30例程度となっている。遺伝情報の発現制御(エピジェネティクス)の解明についても具体的なターゲットが絞り込めていない。 検査を行なった患者のなかでは中等度~重症の睡眠呼吸障害の患者が比較的多く、CPAPの導入を行う患者が予想より多く、dataの蓄積は進んでいる。その反面、高齢者などではCPAP施行時の睡眠時無呼吸の改善効果が明らかにあるにも関わらず、手技や不快感のために継続できない患者も多い。結果として当初の予定よりやや遅れ気味となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は今までどおり検査・診断・加療を進めながら、睡眠呼吸障害の心血管疾患や認知症への関与を明らかにし、CPAPの治療効果を明らかにしていく。CPAPの睡眠時無呼吸への改善効果が明らかにあるにも関わらず、継続困難となる患者も多いことから、その規定因子についても検討していく。さらに抑うつやサルコペニアへの影響に関しても、SDBの関与を当初の予定より詳しく検討していく予定である。 症例数の不足に関しては、高血圧パス・もの忘れパスを再開しており、睡眠呼吸障害パスも開始予定である。また、ホームページや研究会での発表などを通して患者や近隣の医療機関へ当科が睡眠呼吸障害の検査・加療をしていることの周知も図っており、睡眠呼吸障害を疑う症例数は増加すると考えられる。エピジェネティクスの解明についても継続的に検討を加えている。 最終的に各疾患の伸展抑制や予防、治療へ貢献できる形で発表していく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を進めていく上で必要に応じて研究費を執行したため当初の見込み額と執行額は異なったが、研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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