平成20年度科研費で行った研究「NSAIDS起因性小腸潰瘍に対する大建中湯」において、大建中湯が腸管の免疫系細胞に深く関わっていることを明らかにした。その作用機序として、二つの可能性が考えられる。一つは腸内細菌叢を変化させて腸管の免疫系細胞に影響を与える可能性、もう一つは、大建中湯に含まれる生薬が直接的に腸管の免疫系細胞に影響を与える可能性が考えられる。 この仮説を証明するため、DSS誘発性炎症性腸疾患モデルマウスを用いて検討した。大建中湯に含まれる生薬が直接的に腸管免疫系にどのような影響を与えるか、DSS誘発性炎症性腸疾患モデルを用いて、腸内細菌叢、腸管粘膜を介しての腸管免疫系細胞に与える影響を検討した。 使用マウス:Balb/c系雌性マウスを以下の三群に分ける。グループ1:Normal群(水道水を自由飲水、n=5)、グループ2:(5% DSS液を自由飲水、n=5)DSS液を投与する3日前から大建中湯(1g/kg)を経口投与する。グループ3:(5% DSS液を自由飲水、n=5)DSS液を投与する3日後から大建中湯(1g/kg)を経口投与する。各群を8週間飼育した後、麻酔下で屠殺し検討した。 結果:便の性状は、コントロール群ではDAIスコア0、DSS投与群では、DAIスコアは1、DSS投与群+大建中湯投与群ではDAIスコア0であった。大建中湯投与群と非投与群の間で、体重減少・血便・腸管の長さに有意な差は認めなかった。DSS誘発性炎症性腸疾患モデルにおいて、大建中湯は統計的に有意な炎症予防効果は認めなかった。
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