研究課題/領域番号 |
24590884
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
大田 美香 神戸大学, 医学部附属病院, 学術推進研究員 (20274706)
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研究分担者 |
高岡 裕 神戸大学, 医学部附属病院, 准教授 (20332281)
一瀬 晃洋 神戸大学, 医学部附属病院, 特命准教授 (90362780)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 東洋医学 / Aig1l / 鍼通電 / 鍼治療 |
研究概要 |
本研究の目的は、鍼治療効果のメカニズム研究で発見したAcupuncture-induced 1-L (Aig1l)タンパク質機能の解明と鍼治療効果機序の解明である。研究期間内に、(1) Aig1lタンパク質の抗体作製した後に、Aig1lタンパク質の組織化学解析、(2)分子シミュレーションによるタンパク質の立体構造の解析方法を確立し、Aig1lタンパク質の立体構造を解析する。 本年度は、合成ペプチドを抗原として5種類のAig1lタンパク質の抗体を作製した。具体的には、EMBOSSソフトウエアで抗原認識部位を選択し、5種類のペプチドを合成した。そして、合成ペプチドを抗原として、ウサギを用いたポリクローナル抗体を作製した。 次に、分子シミュレーションによるタンパク質の立体構造の解析方法を確立するため、Aig1lタンパク質の構造解析を行った。具体的には、Protein Data Bank JapanのSequence Navigator機能を用いて、Aig1lタンパク質に対してホモロジーが高く、立体構造が解かれている他のタンパク質の領域を検索した。その結果、利用可能な3個のCUBドメインと5個のSushiドメインの領域が得られた。MOEプログラムで各々のドメインの立体構造を計算し、構造最適化を行った。その後、CUBドメインとSushiドメインの立体構造をドキングシュミレーションで連結し、Aig1lタンパク質の217番目から895番目の679アミノ酸の立体構造を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の達成目標は、(1) Aig1lタンパク質の抗体作製と、(2)分子シミュレーションによるAig1lタンパク質の立体構造の解析方法の確立である。 まず、Aig1lタンパク質の抗体作製については、膜タンパク質であるAig1lタンパク質の分離精製は困難が予想されたので、合成ペプチドを抗原として5種類のペプチド抗体を作製した。その際、Aig1lタンパク質の抗原認識部位を決定するため、EMBOSSソフトウエア(http://emboss.sourceforge.net/)を利用した。その結果、数種類の候補の中から5種類の抗原ペプチド領域を選択し、ペプチドを合成した。これらの5種類の合成ペプチドを抗体作製に供した。本研究では、ウサギポリクローナル抗体を作製した。その理由は、速やかに作製可能で、ある程度抗体量を得ることができるからである。 次に、分子シミュレーションによるAig1lタンパク質の立体構造解析に取り組んだ。まず、Protein Data Bank JapanのSequence Navigator機能を用いて、Aig1lタンパク質に対して相同なタンパク質を検索した。その結果、部分的にホモロジーが高く、構造が解かれている領域が数種類存在していた。それは、主にAig1lタンパク質の3個のCUBドメインと5個のSushiドメインの領域であった。そこで、これらのドメインの立体構造をMOEプログラム(Chemical Computing Group社)を用いて解析し、構造最適化を行った。ドキングシュミレーションによりCUBドメインとSushiドメインの構造を連結し、Aig1lタンパク質の立体構造の一部(217番目から895番目の679アミノ酸)を解析した。 以上のように研究計画通りに実施し、研究成果として論文発表と図書(計2本)および学会発表(1回)を行った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、(1)実験に使用可能なAig1lタンパク質抗体の選択と組織化学解析、(2)分子シミュレーションによるAig1lタンパク質の立体構造の解析を行なう予定である。 はじめに、前年度に作製した5種類のAig1lタンパク質抗体の中から、実験に使用可能な抗体を選択する。その後、Aig1lタンパク質の脳内局在と細胞局在を明らかにするために、Aig1lタンパク質抗体を用いて、免疫組織化学解析する。その解析結果から、生細胞での細胞内局在や細胞内での移動等、細胞生物学的な観点から共焦点レーザー顕微鏡での解析を検討する。 次に、分子シミュレーションによるAig1lタンパク質の立体構造の解析では、フラグメントアセンブリ法とMOEプログラム(Chemical Computing Group社)を用いたホモロジーモデリング法で、それぞれAig1lタンパク質の構造を解析する。そして、フラグメントアセンブリ法とホモロジーモデリング法の両者を組み合わせたハイブリット法を確立する。そのハイブリット法を使用して、Aig1lタンパク質の立体構造を決定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1) 実験に使用可能なAig1lタンパク質抗体の選択と免疫組織化学解析 前年度に作製した5種類の抗体について、実際に使用可能な抗体を選択する。具体的には、ウェスタンブロティング法を実施し、目的のサイズにシングルバンドが得られることを確認する。そして、良好な結果が得られたAig1lタンパク質抗体を、免疫組織化学解析に使用する。免疫組織化学解析により、Aig1lタンパク質の脳内局在(大脳皮質か白質か大脳基底核か)と細胞局在(神経細胞かグリア細胞か)を明らかにする。 (2)分子シミュレーションによるAig1lタンパク質の立体構造の解析 前年度に引き続き、Aig1lタンパク質の立体構造を計算する。その際、ホモロジーモデリング法にはMOEプログラム(Checmical Computing Group社)を用いて解析する。フラグメントアセンブリ法とホモロジーモデリング法の両者を組み合わせたハイブリット法の確立に向けて、解析を進める。 以上の研究計画を遂行するため、研究費を使用する。
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