研究課題/領域番号 |
24590887
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
由利 和也 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (10220534)
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研究分担者 |
山口 奈緒子 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (50380324)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ストレス / エストロゲン |
研究概要 |
高齢期にはストレスに対する脆弱性が高くなる。ストレス関連疾患であるうつ病は認知症とならび、老年期精神疾患を代表するものである。しかし、高齢期のストレスに関する研究の多くは社会・心理的もしくは臨床的観点からのアプローチであり、その神経基盤については未だ不明な点が多い。エストロゲンは生殖機能だけではなく、ストレス応答の調節などにおいて重要な役割を果たす。我々はこれまでに、老齢ラットを用いて脳内エストロゲン受容体(ER)-β mRNAの発現を解析した一連の研究から、加齢によってER-β発現量が部位特異的に減少すること、また、その加齢の影響には性差があることを明らかにしてきた。そこで本研究では、高齢期のストレス応答におけるエストロゲンの役割に注目し、加齢がER-βおよび脳内ストレス関連因子に及ぼす影響およびその性差について明らかにすることを目的とした。 本年度は、雌雄のラットを用いて以下の実験群を作製した:(1)若齢期無処置群(雄)、(2)若齢期ストレス群(雄)、(3)若齢期無処置・老齢期無処置群(雄)、(4) 若齢期無処置・老齢期ストレス群(雄・雌)、(5)若齢期ストレス・老齢期ストレス群(雄)。(1)および(2)の群については、若齢期(8週齢)に拘束ストレス(1時間/日)を連続して6日間負荷し、最終日のストレス負荷直後に麻酔下で採血および灌流固定を行い、脳を摘出した。(3)および(4)の群については、若齢期は無処置のまま、老齢期(20か月齢)まで通常飼育を行っている。(5)の群については、若齢期(8週齢)に拘束ストレス(1時間/日)を連続して14日間負荷した後、老齢期(20ヵ月齢)までの通常飼育に戻した。(1)および(2)の群から採取した脳組織を用いて凍結切片を作製し、ストレス関連因子(CRF、オキシトシン、トリプトファン水酸化酵素)に対する免疫組織化学染色を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、当初の計画通りに全ての実験群を作製した。若齢群に関しては、ストレス負荷実験および組織採取を終えて、現在組織実験を行っており、概ね当初計画に沿って遂行した。
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今後の研究の推進方策 |
高齢期のストレス応答におけるエストロゲンの役割と加齢がER-βおよび脳内ストレス関連因子に及ぼす影響について明らかにするため、前年度に作製した実験群を引き続き飼育し、老齢期にストレス負荷実験を行う。我々が以前に加齢ラットを用いて行った一連の実験において、22ヵ月齢頃より死亡率が急激に高くなったことを踏まえて、本研究では老齢期のストレス負荷を、20ヵ月齢で行う予定である。購入時期から算定して、平成25年度後半に実験群が順次20ヵ月齢に達する。20ヵ月齢に達した時点で、老齢期ストレス群に対して拘束ストレス(1時間/日)を連続して6日間負荷する。最終日のストレス負荷直後に麻酔下で採血および灌流固定を行い、脳を摘出する。老齢期ストレス応答におけるエストロゲンおよびその受容体(ER-β)の役割を明らかにするため、老齢期ストレス群を分割して、一方にはER-β遮断薬を、他方にはvehicleをストレス負荷の直前に投与する。これらの実験群の設定により、若齢群と高齢群の比較から、加齢による脳内ストレス応答の変化を、また、雌雄の比較から、高齢期ストレス応答の性差を明らかにできる。 平成25年度前半は、前年度に若齢群から採取した血液サンプルを用いて、ELISA法によりエストロゲン、コルチコステロンおよびACTHの濃度を測定する。測定には市販のELISAキットを用いる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究費は、血中濃度の測定のためのELISAキット(エストラジオール、コルチコステロン、副腎皮質刺激ホルモン)と、老齢期ストレス実験時に用いるER-β遮断薬の購入に使用する予定である。その他、平成25年度の全ての実験に要する一般試薬および実験器具(ディスポーザブル器具を含む)の購入にも使用予定である。
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