研究課題/領域番号 |
24590887
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
由利 和也 高知大学, 教育研究部医療学系, 教授 (10220534)
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研究分担者 |
山口 奈緒子 高知大学, 教育研究部医療学系, 助教 (50380324)
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キーワード | ストレス / エストロゲン / 加齢 |
研究概要 |
高齢期にはストレスに対する脆弱性が高くなる。ストレス関連疾患であるうつ病は認知症とならび、老年期精神疾患を代表するものである。しかし、高齢期のストレスに関する研究の多くは社会・心理的もしくは臨床的観点からのアプローチであり、その神経基盤については未だ不明な点が多い。エストロゲンは生殖機能だけではなく、ストレス応答の調節などにおいて重要な役割を果たす。我々はこれまでに、老齢ラットを用いて脳内エストロゲン受容体(ER)-β mRNAの発現を解析した一連の研究から、加齢によってER-β発現量が部位特異的に減少すること、また、その加齢の影響には性差があることを明らかにしてきた。そこで本研究では、高齢期のストレス応答におけるエストロゲンの役割に注目し、加齢がER-βおよび脳内ストレス関連因子に及ぼす影響およびその性差について明らかにすることを目的とした。 本年度は、雌雄のラットを用いて以下の実験群を作製した:(G3)若齢期無処置・老齢期無処置群(雄)、(G4) 若齢期無処置・老齢期ストレス群(雄)、(G5) 若齢期無処置・老齢期ストレス+ER-β遮断薬投与群(雄)、(G6) 若齢期ストレス・老齢期ストレス群(雄)、(G7)若齢期無処置・老齢期無処置群(雌)、(G8) 若齢期無処置・老齢期ストレス群(雌)。なお、(G1)若齢期無処置群(雄)、(G2)若齢期ストレス群(雄)については前年度に組織採取を終えている。(G3)~(G8)の各群については、老齢期(20か月齢)まで通常飼育を行った後、該当月齢に達した時点で、拘束ストレス(1時間/日)を連続して5日間負荷し、最終日のストレス負荷直後に麻酔下で採血および灌流固定を行い、脳を摘出した。(G3)~(G8)の群から採取した脳組織を用いて、凍結切片の作製を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、当初の計画通りに全ての実験群を作製し、脳組織の採取を終えた。若齢群に関しては、計画通り組織実験が終了しており、今後老齢群と合わせて解析を行う。また、老齢群に関しては、切片作製まで終えており、次年度に組織実験を行う。採取した血液サンプルを用いたELISAのみ進捗が遅れているが(次年度に実施予定)、それ以外は当初計画に沿って遂行した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、当初の計画通り、まず老齢期の各群から採取した脳組織の切片を用いて、ストレス関連因子(CRF、オキシトシン、トリプトファン水酸化酵素)に対する免疫組織化学染色を行う。その後、若齢群および老齢群のすべての発現解析をおこなう。最終的には、全脳での組織解析を目指すが、研究期間内に一定の成果を得るため、特に注目している視床下部、扁桃体、青斑核、縫線核を中心に発現解析を進める。 平成26年度後半は、前年度に行うことができなかった血中濃度測定を行う。若齢群および高齢群から採取した血液サンプルを用いて、ELISA法によりエストロゲン、コルチコステロンおよびACTHの濃度を測定する。測定には市販のELISAキットを用いる。
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