長期飢餓ストレスにより変化するマイクロRNAを見出し、それらの機能を明らかとし、神経性食欲不振症のバイオマーカを確立することを目的とし研究を行った。 Balb-c マウスを用い、長期飢餓モデルマウスを作成した。1日食餌量を50%以上制限するとマウスの死亡率が高まり、実験への使用が困難である事が 判明した。40%食餌制限であれば、死亡率は低く、十分な体重減少が得られた。また、通常慢性ストレスを1時間/日×10日間施行したマウスも作成し、海馬よりRNAを抽出した。 動物実験により、飢餓ストレスで優位に変化するmiRNAは約20個存在し、リアルタイムPCRでも幾つかのmiRNAに発現亢進や発現低下が見られることが明らかとなった。また、通常ストレスマウス群の海馬RNAと比較することにより飢餓ストレス特異的なmiRNAを特定した。miRNAをコードするDNA領域のメチル化異常についても引き続き検討中である。患者群の検討も引き続き検討中である。 一部のmiRNAは神経の発育に関連するタンパクを制御している可能性が予測された。神経性食欲不振症における、内科的あるいは心理・行動面の異常を説明する手がかりとなり得ることが考えられた。飢餓ストレスにより後天的に発現変化するmiRNAの機能が推定され、神経性食欲不振症等の飢餓ストレス状態における新たなエピジェネティックメカニズムの解明やバイオマーカーの開発という観点からも重要な知見が得られた。
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