研究概要 |
本研究では,過敏性腸症候群(Irritable bowel syndrome:IBS)に有効な新しい心理学的介入方法について検討をおこなっている。これまでの研究により,IBSの特徴として,①高不安を主とする心理的異常を示すこと,②高不安は脳機能異常を基盤とすること,③脳機能異常と消化管運動機能異常は相互作用すること,④薬物療法により脳機能異常および消化管運動機能異常が改善することをそれぞれ確認している。しかしながら,不安緩衝を目的とした心理学的介入は発展しておらず,その効果についても詳しく知られていない。本研究では,不安緩衝を目的とした心理療法をIBS患者に実施し,その有効性を複数の心理指標および生理指標を用いて検討を始めている。 昨年度の研究では,対象者のリクルート,検査機器の準備と調節,アンケートの準備がメインであった。対象のリクルートについては,臨床群を厳選するため,対象者の心理的側面である神経症傾向,消化器症状の重症度をアセスメントした。その結果,神経症傾向が下痢型IBSの消化器症状の重症度と正の相関関係にあることが明らかになったことから,この関係を取り上げまとめて英文誌に投稿し受理されている。 機器の調整については,脳波の測定する装置の調整については,分担研究者からのサポートを受ける形で順調に進めることができた。現時点において,今年度進める予定である介入と介入時の脳波を中心とする生理的検査等の準備は整っている状態である。
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