研究課題/領域番号 |
24590891
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
浅川 明弘 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (10452947)
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研究分担者 |
藤宮 峯子 札幌医科大学, 医学部, 教授 (10199359)
堀内 正久 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50264403)
網谷 東方 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (70535674)
乾 明夫 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80168418)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 終末期 / 癌性悪液質 / 老化 / サルコペニア / アシルグレリン / デスアシルグレリン / 漢方 |
研究概要 |
実験動物として担癌(BALB/c大腸癌colon26移植)マウスと非担癌マウスを用いた。担癌マウスは摂食量が減少し、約3週間で死亡した。体重は非担癌マウスに比較して増加、飲水量に差はなかった。大腸癌移植後の10日目と15日目に握力テストを施行し、15日目に担癌マウスにおいて、握力の低下を認めた。大腸癌移植後の11日目と16日目に血液、組織を採取し、11日目において、腹水の存在、脂肪、心臓、長趾伸筋の重量、血中のインスリン、アディポネクチンの低下、血中の総グレリン、コルチコステロンの上昇、16日目において、ヒラメ筋の重量、血中の糖、レプチン、アシルグレリン/総グレリン比の低下、を認めた。さらに16日目において、視床下部における情動行動関連神経ペプチド:arginine vasopressin (AVP)、proopiomelanocortin (POMC)、agouti-related protein (AGRP)、neuropeptide Y (NPY)などの発現を検討し、AVP、NPY、AGRPの上昇、POMCの低下を認めた。老化促進(α-Klothoノックアウト)マウスとwildマウスを用いた検討においては、老化促進マウスで摂食量の低下を認めた。血中の糖、インスリンは低下、コルチコステロンは上昇していた。また血中のアシルグレリン、デスアシルグレリンは上昇していたが、アシルグレリン/デスアシルグレリン比の低下を認めた。従って、癌性悪液質、老化においては、アシルグレリンが、アシルグレリンの作用を抑制する作用を有するデスアシルグレリンに対して、相対的に低下していて、アシルグレリンの補充、アシルグレリン受容体の感受性増強が、病態の改善に有効である可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
担癌(BALB/c大腸癌colon26移植)マウスと老化促進(α-Klothoノックアウト)マウスを用いて、マウスの癌性悪液質、老化の終末期における表現形の解析が施行された。摂食量が低下しているにも関わらず、摂食促進作用を有するアシルグレリンの血中レベルは上昇していること、アシルグレリンが、アシルグレリンの作用を抑制する作用を有するデスアシルグレリンに対して、相対的に低下していることが示された。これらの知見は、本研究課題において次年度以降に予定している、アシルグレリン、及びアシルグレリン受容体の役割に関する検討が、罹癌、加齢の終末期の病態改善のために有用であることを示唆している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度以降においても、実験動物として雄性の担癌(BALB/c大腸癌colon26移植)マウス、及び老化促進(α-Klothoノックアウト)マウスを用いる。まず、内因性のアシルグレリンの役割を検討するため、抗アシルグレリン抗体あるいはコントロールIgGを腹腔内に隔日投与する。また、内因性のアシルグレリン受容体の役割を検討するため、アシルグレリン受容体アンタゴニストあるいはvehicleを腹腔内に連続投与する。投与後に、摂食量、飲水量、体重、24時間活動量を毎日測定、体組成の変化を3日毎に測定、高架式十字迷路試験、オープンフィールド試験、生存日数の記録、を行う。次にアシルグレリンシグナルの活性化による摂食量、不安行動、活動量、体組成の変化、を検討するため、アシルグレリンあるいはvehicleを腹腔内に連続投与する。さらに、アシルグレリンを分泌させ、アシルグレリン受容体の感受性を増強させる、ヘスペリジン、アトラクチロジンを経口に連続投与する。投与後に摂食量、飲水量、体重、24時間活動量を毎日測定、体組成の変化を3日毎に測定、高架式十字迷路試験、オープンフィールド試験、生存日数の記録、を行う。最後に実験動物として担癌のグレリンノックアウトマウスを用いて、ヘスペリジンとアトラクチロジンの両方の連続投与とvehicleの連続投与との比較を行う。これらの知見を統合し、癌、加齢の終末期における心身の変化に対する、アシルグレリンシグナルの役割、アシルグレリンシグナル活性化の有効性、を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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