研究課題
基盤研究(C)
脳内の老人斑を画像化する手法としてPiBを用いたアミロイドイメージングが開発され、我々は、その成果から臨床的には除外診断でアルツハイマー病と診断した患者の中に、PIB-PETが陰性で脳内にアミロイドの蓄積が証明されない患者が存在することを見いだした。我々はこれらの患者群をPIB陰性認知症と名付け、その髄液バイオマーカーの分布からアルツハイマー型認知症とは異なる背景病理をもつ患者群である可能性を指摘した。そしてさらなる研究の結果PIB陰性認知症患者の背景病理として、高齢者タウオパチー(嗜銀顆粒性認知症と神経原線維変化型認知症)、前頭側頭型認知症が含まれるという確証を得るにいたった。先行研究では年齢を制限せずに研究を行ったが、高齢者タウオパチーはその病名の通り高齢者に認められる疾患で有る。そのため本研究では対象患者を高齢者、特に80歳以上に限定し、その中で臨床的にはアルツハイマー型認知症と診断された患者にアミロイドイメージングを行い、その臨床的特徴などについて調べる予定である。これまでの先行研究によって見いだされたPIB陰性認知症患者は14例であり、より多くの高齢者タウオパチー患者を見つけ、その人達を研究対象として登録し、followすることが本研究の当初の目的である。本年は認知症患者への一般のアミロイドPETは42件行うことができた。その中で80歳以上の高齢者は8例であり、MCI疑いが1例、アルツハイマー型認知症疑いは2例であった。その内1例が陰性であった。そのため本年度は1例の登録となる。来年度に向けてさらに症例を重ね蓄積する予定である。
3: やや遅れている
我々の先行研究で、PIB陰性認知症患者はアルツハイマー型認知症53例に対して14例認めていた。その中で高齢者タウオパチーに該当する症例は約半数ぐらいであると考えている。先行研究で認めたこの14例のうち積極的に嗜銀顆粒性認知症が疑われた症例は4例であった。そのため本研究では対象症例の年齢を引き上げることで、より効率的に発見するよう計画していた。そして年間5例程の高齢者タウオパチーを発見することを目標としていた。しかし本年度はスクリーニングを行う高齢者を予定通りentryすることができず、その結果として1例しか見つけることができなかった。その理由の一つは、スクリーニング検査のためのアミロイドPETを受けた患者が少なかった事による。すなわち本研究におけるアミロイドイメージング用のPET製剤は大学病院で合成され患者に投与される。そのため大学内の他の研究との兼ね合いで実施症例数が変動する。またアミロイドイメージングを用いた他の研究(前頭側頭型認知症を対象)を優先して行ったことにもよる。それらの理由により本年度は高齢者の施行例が少なかった。来年度は積極的に行う予定である。
最近は抗アルツハイマー薬の発売により、治療が可能となったという認識が広く一般の人たちにも受け入れられているため、昔は年だからとあきらめられていた80歳以上の高齢者でも、認知症の精査加療を求めて病院を受診するケースが増えている。そのため80歳以上の高齢者で認知症を訴えて病院を受診し、スクリーニング検査にてアルツハイマー型認知症が疑われる患者は一定数存在する。そのためentryそのものはそれほど困難とは思われない。本年度はPETを本研究のため使用することが可能となる予定であり、目標数のPIB陰性認知症患者を発見できると思われる。
該当無し
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