研究課題
本年度は最終年度であり、英国ニューカッスル大学での末梢血テロメア長の測定を含め、すべての医学生化学データの測定を完了し、論文投稿の準備を進めている。本研究課題では細胞老化の指標である末梢血テロメア長(以下LTL)がヒトの個体の老化にいかに関連しているか、百歳以上の高齢者(以下百寿者)と、一般の高齢者の比較において検証した。対象は百寿者684名、うち100-104歳のYC(young centenarians) 275名、105-109歳のSSC(semi-supercentenarian) 387名、110歳以上のSC(supercentenarians) 22名、百寿者の直系家族(平均年齢76歳) 167名、その配偶者(平均年齢73歳)167名、85歳以上の高齢者(99歳まで)536名の合計1,554名である。LTLはニューカッスル大学でreal-time PCR法で一括測定し、慢性炎症のマーカーとして血漿中tumor necrosis factor-alpha (TNF-a), interleukin-6 (IL-6), CRP, サイトメガロヴィルス抗体価を測定した。百寿者は10年まで総死亡を、85歳高齢者は4年間の総死亡を追跡調査した。これまでの多くの疫学調査結果と同様、LTLは90歳代まで加齢とともに短縮した。しかし、100歳以降はLTLの短縮は見られず、50-99歳までの加齢に伴うLTLの短縮速度を外挿して求めた補正LTLよりも実測値で有意に高かった。85歳高齢者ではテロメア長は総死亡と有意に関連(中間位で最も予後が悪かった)したが、100歳以降ではテロメア長は総死亡と関連しなかった。また、全年齢で検討すると慢性炎症(TNF-a, IL-6)はテロメア短縮と関連したが、百寿者では関連が見られなかった。結論として、百寿者に代表される健康長寿者では加齢、慢性炎症にもかかわらず、LTLの短縮は起こらなかった。この結果から、テロメアの維持は健康長寿の指標である可能性が示唆された。
健康長寿の延伸が国家的目標となっており、百寿者研究にに対する国民の関心は高く、本研究の内容の一部は2014年10月15日放送のNHKクローズアップ現代に取り上げられた。2015年1月7日中日新聞、1月17日日本経済新聞に関連記事が掲載された。
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J Dent Res
巻: 94(3 Suppl) ページ: 28S-36S
10.1177/0022034514552493
J Dent.
巻: 43(3) ページ: 342-9
10.1016/j.jdent.2014.12.011.
http://www.hosp.keio.ac.jp/annai/shinryo/supercentenarian/