研究課題/領域番号 |
24590899
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
石川 慎太郎 昭和大学, 医学部, 講師 (70439355)
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研究分担者 |
久光 正 昭和大学, 医学部, 教授 (20167604)
砂川 正隆 昭和大学, 医学部, 准教授 (20514467)
中西 孝子 昭和大学, 医学部, 准教授 (00175499)
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キーワード | 鍼刺激 / アロディニア |
研究概要 |
【目的】パクリタキセル(抗癌剤)は乳ガンなどの悪性腫瘍に対して大変期待されている化学療法の一つである。その一方で副作用として手足のしびれをはじめとする“末梢神経障害”が高頻度に生じる。そこで鎮痛作用や自律神経機能調節作用があるといわれる鍼療法を抗癌剤による末梢神経障害に対して応用し、その効果を検討した。 【方法】本年度は、昨年度に続き、パクリタキセルによる末梢神経障害モデルを用いて客観的評価法により検討を行った。パクリタキセルを5週齢の雄ラットの腹腔内に注射した末梢神経障害モデルを作製した。パクリタキセル投与と並行して足三里(ST-36)へ鍼刺激を施行あるいはヌクレオシド受容体の阻害薬を用いて坐骨神経における末梢神経障害の出現を比較するとともに、パクリタキセルの投与法(量)を変えることで、末梢神経障害のグレードの異なるモデルの作製を行った。 電子痛覚測定装置(Von Frey 2390)、熱痛逃避反応検査(UGO BASILE Plantar Test 法)をはじめとする動物行動試験を中心に末梢神経障害の評価を行い、神経過敏性(アロディニア)の出現を観察した。また同動物から脊髄および末梢神経を採取し、免疫染色法により、アロディニアに関与するグリア細胞の発現を中心に観察を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
パクリタキセル投与量を調節することにより、機械的侵害刺激に対して閾値の低下が認められるのに対して熱刺激では閾値の変化が認められないなど、パクリタキセルモデル特有のアロディニアを発現するモデルを作製することが出来た。そこでこのモデルを用いて鍼刺激の効果を観察したところ、鍼施行群でのアロディニアの出現は抑制されることが判明した。さらに免疫染色法により、アストログリアの出現に差異が生じており、現在追試により再現性を検討している。また当該年度に鍼刺激の施行時期などの検討を行うはずであったが、再現性を得るに至っておらず、今後さらなる検討が必要である。
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今後の研究の推進方策 |
25 年度に得られた結果を基に研究を進め、動物実験を中心に鍼のより有効な利用方法を探る予定である。末梢神経障害モデルは5-8週齢の雄ラットを用い、パクリタキセルを腹腔内に注射して作製する。末梢神経障害の評価として、動物行動試験には、von Frey法、熱痛逃避反応検査を引き続き採用する予定である[担当:石川・中西]。また組織学的に末梢神経障害を評価する目的で軸索内微小管のβチューブリンの免疫染色により組織学的変化を確認する。また末梢神経障害時にともなう脊髄内変化の観察としてグリアの組織・機能学的変化を確認する[担当:石川・砂川]。また平成25年度に終了する予定であった、鍼治療の有効な開始時期、治療間隔、刺激部位を引き続き検討する予定である[担当:石川]。その上で、腫瘍成長分析をおこなったのち、臨床応用での評価を行う予定である。乳ガン細胞(FM3AをC57BL/6マウスの足底皮下に移植する。腫瘍細胞の移植3 日後からパクリタキセル投与と鍼刺激を始め、腫瘍容積を測定する。パクリタキセルの抗腫瘍効果を鍼刺激が阻害しないか観察する[担当:石川]。 動物実験において一定の効果が得られた場合、ヒトを対象とした鍼治療を施行する。本学付属病院で乳癌治療中にパクリタキセル投与による末梢神経障害を合併している患者のうち同意を得られた者に対して鍼による治療を行い、VAS 法および神経伝導速度を指標として鍼刺激の評価を行う[担当:石川・久光]。 【研究が当初の計画通りに進まないときの対応】 動物実験の研究の結果を踏まえて臨床へ応用する予定であり、動物実験での検討が十分に行われなければ臨床応用の検討は行わない。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に終了する予定であった研究テーマの一部が予定通り進行せず、研究内容が次年度に持ち越しとなったため。 鍼治療の有効な開始時期、治療間隔、刺激部位を引き続き検討する予定である。その上で、腫瘍成長分析をおこなったのち、臨床応用での評価を行う予定である。この目的遂行のための動物の購入と分析に必要な抗体およびPCRプライマーなどに研究費を充てる予定である。これまでの結果を学会等で発信する予定である。
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