研究課題/領域番号 |
24590900
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
新見 正則 帝京大学, 医学部, 准教授 (80198415)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 漢方薬 / 移植免疫 |
研究概要 |
当帰芍薬散内服の実験ではマウス心臓移植モデルの拒絶中央値が47日となった。1味抜き当帰芍薬散投与や6種の構成生薬単独投与ではそれに至らず、すべての生薬が生着延長に必要と考えられた。次に、2つの生薬を組み合わせて投与したところ、芍薬+川きゅうでは中央値が100日以上となり、そこに茯苓が加わると、10日となった。しかし、茯苓単独投与では中央値は18日と軽度の抑制効果を持ち、一方で芍薬+川きゅうの効果を阻害していることも判明した。この茯苓の双方向の作用に関して研究継続中である。 次に茵ちん五苓散の研究では、茵ちん五苓散自体の投与では拒絶中央値が30日となったが、その生薬成分の茵ちん蒿は100日以上となった。茵ちん蒿投与群ではフローサイトメトリー分析や養子移植実験、免疫組織染色等から免疫制御細胞の誘導が確認され、生着延長効果を証明した。この研究結果はEvidence-Based Complementary and Alternative Medicine(2012)に掲載済みである。茵ちん蒿に含まれる成分に関して、高速液体クロマトグラフィー等で解析を継続中だが、解明にはまだ時間が必要である。 匂いの研究では、当帰芍薬散を内服させると拒絶中央値が47日になるのに対して、キャビネット内に匂いを充満させたところ拒絶中央値が100日となった。内服の研究と同様に、匂いを嗅がせたマウスにも免疫制御細胞が誘導され、生着延長を示すことが分かった。次に、この効果が脳の匂い中枢に作用するものか、または鼻粘膜からの匂いの吸収で効果を表すかを調べるために、外科的に嗅球を除去したマウスを作製した。この嗅覚不全マウスに当帰芍薬散の匂いを嗅がせたところ、拒絶中央値は7日となり、匂い中枢から脳への刺激が身体中の免疫に影響する可能性を示唆する結果となった。現在、Human Immunologyに研究結果を提出中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当帰芍薬散の生薬の成分分析にはまだ時間を要するが、茵ちん五苓散内服の効果に関する研究は既に論文掲載済みである。匂いの研究に関しては、漢方薬の匂いが免疫制御細胞を誘導することを証明し、研究発表を多数行い、現在論文提出中である。同時に、聴覚不全マウスの結果から脳科学と免疫との関係性を検討している。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の実験を更に進める。茯苓、茵ちん蒿に含まれる成分の解析を継続すると同時に、脳刺激と免疫の関係についても研究を深める。 また、漢方エキス剤の解析は約40種が終了したばかりであり。保険適用の148種のすべてを網羅的に解析する。生薬についても同様である。1種類の生薬が生着延長効果に効果を持つ場合や、構成生薬のバランスが生着効果の源である場合もある。この不思議な機序を免疫学的に解析することは漢方の有効性、有用性に留まらない貴重な情報となる。解析方法は既に過去に多数行っており、フローサイトメトリー分析やAdoptive transfer study(養子移植実験)、免疫組織染色、サイトカイン定量等をまず行っていく。脳科学の解析では脳への効果を画像化していくことも検討中である。 実験は基本的に内山雅照と金相元が行う。彼らは100%実験に従事しており、帝京大学大学院を卒業した張奇、白土裕之も実験に協力している。免疫組織染色は獨協医科大学医学部マクロ解剖学教室の機器を借用して我々自身が行っている。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度研究経費は平成24年度同様すべて消耗品である。研究設備は既存の設備(新見正則研究室)で全く問題ない。移植にはマウスがレシピエントとドナーで2匹必要である。CBAとC57BL/6はそれぞれ2000円程度であり、1移植あたり4000円が必要となる。1群には少なくとも10組必要であり、漢方エキス剤148種類、それらの構成生薬を約100種類となると250群×10組×4000円=1000万円となる。このマウス購入費を減らすために、帝京大学中央動物センターと研究室においてマウスの交配を行っている。交配させるマウスの購入は必要であるが、すべての実験に必要な数を購入するよりも約10分の1となる。飼育費用は別途必要で、この研究計画書の実験を行うには交配用マウスの購入費用とマウスの飼育費用で約80万円となる。 心臓移植用の糸は高価で、10-0ナイロン糸を使用するが1本は1000円する。10回の心臓移植に使用可能で、1回あたり100円となる。5200組行う25万円である。免疫学的解析費用は細胞分離用のビーズやフローサイトメトリ―用抗体、サイトカイン測定キット、リンパ球培養キットのものである。
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