研究実績の概要 |
個体老化の基本的な原動力として「炎症老化」という概念が提唱されている。健常人とヒト老化モデルであるウエルナー症候群を用いて、以下の検討を行った。 健常人0歳から100歳の217名、WRN2変異を確認した早老症ウエルナー症候群患者41名の血清中の27種類サイトカイン・ケモカインを、BioPlex multiple array systemで同時測定した。研究開始前に、同じ検体で、高感度CRP、MMP9を測定し、健常人では、加齢に従って、血清高感度CRP濃度が有意に増加していた.同じように、高感度CRP濃度とMMP9濃度は、有意に相関することも確認している。 早老症では、年齢にかかわらず、高感度CRP,MMP9が増加しており、若年のうちから、健常人高齢者に匹敵する「炎症老化」が起きていることが確認されている。 健常人では、IL-4,6,13,15,GM-CSF,IFN-γ,TNF-α,IP-10が、加齢により有意に増加し、IL-2,8,MIP-1αが、有意に低下している。また、高感度CRPと、IL-6,13,15,IP-10は、有意に正の相関を示し、MIP-1α、IL-8は、負の相関を示した。高感度CRP、年齢を考慮しても、有意に正相関するサイトカイン・ケモカインは、IL-6,13,15,IP-10で、負の相関は、IL-8,MIP-1αで認められた。早老症患者では、健常人コントロールと比べ、IL-2,4,6,10,15,GM-CSF,IFN-γ,TNF-α,IP-10,basicFGF,G-CSFが有意に増加し、健常者高齢者と比べても、IL-1-β,IL-1ra,2,6,15は、有意に増加していた。患者では、健常者コントロールと比べ、有意に低下していたサイトカイン・ケモカインは、見られなかったが、健常者高齢者と比べると、IL-5,15,PDGFは有意に低下していた。また、患者では、高感度CRPと有意な相関を示したのは、IL-6,12,VEGFであった。
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