研究課題
基盤研究(C)
ストレス応答の異常あるいは破綻が、うつ病・不安障害・自律神経機能障害をはじめとするストレス関連疾患の発症に関与すると推測されている。視床下部室傍核はストレス応答の制御中枢の一つであり、副腎髄質からのカテコラミン分泌を調節することによって、脳神経細胞へのブドウ糖取り込みにも関与すると考えられている。我々はシクロオキシゲナーゼ阻害薬の脳内前処置によってカテコラミン分泌が抑制されるという実験成績をもとに、麻酔ラットの視床下部室傍核において産生されるトロンボキサンA2が、副腎髄質からのカテコラミン分泌を促進し、ストレス応答の脳内メディエーターとして作用していることを明らかにしてきたが、視床下部室傍核におけるトロンボキサンA2産生調節と脳神経細胞へのブドウ糖取り込み調節の相互作用についての詳細は明らかではない。PPARγは末梢組織におけるブドウ糖代謝を調節する転写因子としてよく知られているが、ごく最近ラット大脳皮質切片のブドウ糖代謝にも関与することが明らかにされ、さらに急性拘束ストレスによって、ラット大脳皮質のPPARγ発現が増加し、腹腔内投与したPPARγ刺激薬は、急性拘束ストレス負荷したラットの大脳皮質から調製したシナプトソームへのブドウ糖取り込み低下を抑制すると報告されている。急性拘束ストレスによる血中カテコラミン増加は血中ブドウ糖を増加させることから、我々は、逆に5%ブドウ糖を持続的に静脈内投与して急性拘束ストレスを負荷したところ、5%ブドウ糖の持続的静脈内投与は急性拘束ストレスによる血中カテコラミン増加を抑制するという実験成績を得た。今年度は急性拘束ストレス負荷による血中カテコラミンおよび血糖値の経時的な変化を測定し、5%ブドウ糖の持続的静脈内投与の影響も調べ、n=5~6の実験成績が再現性よく得られた。
2: おおむね順調に進展している
研究代表者は2011年4月に現所属機関に異動してきたため、それまでに前任地で行ってきた予備実験についても、血中カテコラミン測定系を含めて全く新たな実験系を立ち上げる必要があり、かつ実験成績の再現性を一つ一つ確認する作業に時間がかかったことは、実験計画の進捗状況に少なからず影響を及ぼしたと考えている。しかし、二年目の夏期に実験室の改修も終了し、計画を実行する上で必須の実験機器もほぼ揃ったので今後は予定にそった形で実験を遂行できると考えている。なお、現所属機関にはLC/MS/MSが完備されており、パンチアウトした視床下部室傍核中のトロンボキサンA2の定量には当初予定していたELISA法ではなく、LC/MS/MSを用いた分析も可能であることがわかった。
二年目は一年目で到達できなかった項目、特にパンチアウトした両側視床下部室傍核のタンパク質抽出液中のCOX1, COX2, TxSyntase, NF κB, PPARγレヘルの変化をウエスタンブロット解析で、mRNAレベルの変化をリアルタイムPCRによって解析し、これらの分子と血中カテコラミンおよび血糖値の関係を明らかにする。さらにすでに予備実験で一定の傾向を確認してあるAMPKのリン酸化についても最終的なfigureを作成できるようにN数を増やす。視床下部室傍核におけるNFκBもしくはPPARγと相互作用する可能性のあるトロンボキサン合成酵素遺伝子の転写調節領域をクロマチン免疫沈降法で解析する。
実験動物のラットに約20万円、ウエスタンブロット解析のための抗体等に約70万円、リアルタイムPCR関連試薬等に約10万円、クロマチン免疫沈降関連試薬等に30万円、その他一般試薬、ディスポ器具等に約10万円、以上あわせて約140万円程度の使用額を見込んでいる。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (3件)
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