視床下部室傍核はストレス応答の制御中枢の一つであり、副腎髄質からのカテコラミン分泌の調節に関与すると考えられている。我々は麻酔ラットの視床下部室傍核において産生されるトロンボキサンA2 (TxA2)が、副腎髄質からのカテコラミン分泌を促進し、ストレス応答の脳内メディエーターとして作用していることを明らかにしてきた。さらに急性拘束ストレスラット視床下部室傍核のpresympathetic neuronにおいて、TxA2産生の律速酵素であるCOX1、COX2発現が増加することを見いだした。ごく最近他グループから急性拘束ストレスによってラット大脳皮質PPAR γ発現が増加することが報告されたことから、COX1、COX2発現とPPARγは密接な関係にあると予想される。そこで急性拘束ストレスラットの視床下部室傍核におけるPPARγの局在を免疫組織化学法により形態学的に解析した。急性拘束ストレスを負荷し、PPARγ発現の時間経過を観察した。0~負荷2時間後までは視床下部室傍核のいずれの領域にもPPARγ発現を認めなかったが、負荷3時間後に視床下部室傍核のpresympathetic neuronが局在する主にdorsal cap領域において、PPARγ発現陽性細胞を認めるようになった。これら陽性細胞におけるPPARγの細胞内局在が、細胞質内もしくは核内かについては明らかにできなかった。一方、対照群においては、時間経過を通じて、PPARγ発現は認めなかった。以上の実験成績から、視床下部室傍核のpresympathetic neuronにおけるPPARγが、急性拘束ストレス負荷によるCOX1、COX2発現に何らかの生理学的役割を果たしている可能性が示唆された。
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