研究課題/領域番号 |
24590905
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 関西医療大学 |
研究代表者 |
木村 研一 関西医療大学, 保健医療学部, 講師 (50353040)
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研究分担者 |
田島 文博 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (00227076)
石田 和也 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (70398460)
高橋 紀代 大阪医科大学, 医学部, 助教 (80296714)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 鍼 / 筋交感神経活動 / 下肢血流 |
研究概要 |
従来、経穴への鍼刺激により刺激局所だけでなく全身性に末梢循環が改善することが知られているが、詳細な神経性機序は不明である。本年度はプレチスモグラフィを用いて下腿前面の足三里穴(ST36)への鍼刺激が反対側の下肢血流に与える影響について偽鍼刺激と比較検討した。対象は健康成人男性8名とし、被験者は安静仰臥位にて室温順応後、プレチスモグラフィを用いて右下肢血流量を測定した。下肢血流量は水銀式ストレンゲージを下腿に装着し、大腿に装着したカフで加圧(50mmHg)した際の動脈血流の流入に伴うプレチスモグラムの波形の傾きから自動解析ソフトを用いて算出した。プロトコールは10分間安静の後、左足三里穴(ST36)に鍼刺激を15分間行い、鍼刺激後は20分間、安静とした。偽鍼刺激には鍼体が鍼柄にはまり込む仕組みで鍼管を伴ったパク式偽鍼を使用した(Park J et al, Acupuncture in Med, 2002)。鍼刺激と偽鍼刺激は同一被験者で1週間以上の間隔を空けてランダムに行った。同時に左上腕からカフにて収縮期・拡張期血圧、心拍数を5分毎に測定した。結果、足三里穴(ST36)への鍼刺激により、反対側の下肢血流および血圧、心拍数は刺激前値に比べて有意な経時変化を示さなかった。鍼刺激、偽鍼刺激の比較においても有意差は認めなかった。被験者の全例において、偽鍼刺激でも実際に鍼が刺入されていると感じたと答えた。これらの結果から、鍼刺激が反対側の下肢血流に与える影響は少ないことが認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度は交付申請書の研究実施計画に従ってプロトコール1を行った。プロトコール1ではプレチスモグラフィを用いて足三里穴(ST36) の鍼刺激による遠隔部の下肢血流反応をコントロールと比較し、鍼刺激が遠隔部の下肢血流に与える影響を検討した。その結果、鍼刺激が反対側の下肢血流に与える影響は少ないことが認められた。現在までは交付申請書の研究実施計画に従って研究が遂行され、24年度の研究の目的は達成できている。25年度、26年度も交付申請書の研究実施計画に従い、マイクロニューログラフィーを用いた研究を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はプロトコール2を行う。プロトコール2では安静時における足三里(ST36)への鍼刺激による筋交感神経活動(muscle sympathetic nerve activity:MSNA)への影響を観察する。被験者は安静仰臥位にて室温順応後、マイクロニューログラフィーを用いて右腓骨神経のMSNAを測定する。併せて心電図、血圧を連続測定する。MSNAは積分波形の1分間のバースト数(burst rate)と1分間のバースト数× 1分間の平均バースト振幅 (total MSNA)を評価する。鍼刺激のプロトコールはプロトコール1と同様とする。プロトコール2では安静時において足三里穴(ST36)の鍼刺激によるMSNAの反応を偽鍼と比較検討する。翌年度はプロトコール3を行う。プロトコール3ではMSNAの基礎活動と反応性との関係を検討するために局所冷却(アイスパック)によるMSNAの増加反応に足三里穴(ST36)への鍼刺激がどのような影響を及ぼすのかを明らかにする。プロトコール2と同様にマイクロニューログラフィーを用いて右腓骨神経のMSNAを測定する。同時に皮膚温(左大腿、下腿、足部)、口腔内温(深部温)、心電図、左側の上腕部よりカフにより収縮期・拡張期血圧を測定する。プロトコール3では安静10分間の後、右側の下腿にアイスパックを20分間施行する。アイスパック開始後に左側の足三里穴(ST36)に鍼刺激を15分間、行う。鍼刺激後は20分間安静とする。プロトコール3ではアイスパックによるMSNAの増加反応に対する足三里穴(ST36)の鍼刺激による影響を偽鍼と比較検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度はマイクロニューログラフィーを用いて腓骨神経から筋交感神経活動(muscle sympathetic nerve activity:MSNA)を測定し、鍼刺激による影響を検討する。したがって、マイクロニューログラフィーで使用するタングステン微小電極が消耗品として必要になる。タングステン微小電極は1本約3500円と大変高価であり、測定には熟練を要し、再利用はできないため、年間約60本は必要であると考えられる。次年度の研究費は主にタングステン微小電極の購入に用いる予定である。タングステン微小電極以外にはステンレス鍼やパク式偽鍼、アイスパックなどの消耗品を購入する。MSNAの測定に必要な機器は現在、実験を行う検査室に整っており、新たに購入の必要は無い。
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