研究課題/領域番号 |
24590906
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研究機関 | 森ノ宮医療大学 |
研究代表者 |
川畑 浩久 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 助教 (30454680)
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研究分担者 |
青木 元邦 森ノ宮医療大学, 保健医療学部, 教授 (00346214)
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キーワード | 関節拘縮 / 滑膜 / HIF / CTGF / VEGF |
研究概要 |
本研究では、詳細が不明であった関節拘縮の分子メカニズム解明とそれによる新規治療概念の構築を目的としている。本研究ではマウス関節不動化モデルを用いたが、同モデルでは経時的な関節可動域の減少を認めた。固定1週間では筋肉切除により可動域制限は解除され、固定2週間では筋肉切除でも可動域制限が変化しないことから、拘縮の初期は筋肉固縮由来であり、その後関節由来であることが示された。HE染色では滑膜肥厚が認められ、滑膜肥厚による可動域制限が考えられた。Realtime PCRを用いた検討で、CTGF, VEGFのmRNA発現が不動化により亢進していることが確認され、また免疫染色においてもCTGFの滑膜での発現亢進、また新生血管の増生が認められ、CTGFによる滑膜線維化、VEGFによる新生血管増生と破綻による癒着が滑膜肥厚を惹起していると考えられた。さらにCTGF, VEGFを制御する転写因子HIF-1のmRNA発現が不動化5日で有意に亢進しており、ELISAを用いた検討でも、その転写活性は同時期に亢進しており、HIFの転写活性を介してCTGF, VEGFが誘導されることが示唆された。 低出力超音波照射装置LIPUSを用いた検討では、LIPUS照射群でCTGF, VEGFのmRNA発現抑制と関節可動域制限進展の抑制を認めた。LIPUS照射群ではHIFの転写活性が抑制されていたことから、LIPUSによる律動的な微細運動負荷が血流改善に寄与し、低酸素で惹起されるHIFの活性を抑制することで有用性を示したと考えられた。 さらにHIFのDNA結合部位と同じ配列を有するデコイ型核酸医薬を作成し、デコイによる転写因子HIFの活性化抑制による効果を検討した。不動化と同時にデコイ核酸医薬を関節注入した群で可動域制限は有意に抑制され、HIFが関節拘縮の病態に重要な役割を果たしており、治療ターゲットとなることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス不動化関節拘縮モデルにおいて、HIF活性化に伴うCTGF, VEGFの発現亢進、それに伴う滑膜肥厚・線維化を確認し、本研究の仮説が概ね検証された。昨年度の課題であったHIF転写活性の不動化による亢進が確認され、CTGF, VEGF発現亢進のメカニズムが解明されたと同時に、HIFが治療ターゲットとなりうることが示された。さらに、HIFに対するデコイ型核酸医薬を作成し、不動化モデルに対する関節注入が可動域制限を有意に減少させ、分子治療戦略の可能性が示唆された。デコイ核酸医薬の導入細胞の同定や関連遺伝子発現など分子マーカーの詳細な検討が残っているものの、モデルは確立しており、全体として概ね順調に進捗していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
デコイ核酸医薬の関節注入はマウスでは困難であり、これに関してはラットを用いて検討している。デコイ核酸医薬の導入細胞の同定を行い、デコイ導入群でのCTGF, VEGF, HIFの変化を今後検討し、またデコイ核酸医薬の至適用量の検討を継続して行う。これをもって論文による成果の公表を行う。 またTNF-αの発現亢進も確認されていることから、それを制御している転写因子NFkBの関与についても今後検討を続けていく予定である。
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