研究課題/領域番号 |
24590908
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人国立長寿医療研究センター |
研究代表者 |
中村 昭範 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 脳機能画像診断開発部, 室長 (00237380)
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研究分担者 |
加藤 隆司 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 脳機能画像診断開発部, 室長 (60242864)
新畑 豊 独立行政法人国立長寿医療研究センター, 脳機能診療部, 医長 (80501212)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | アルツハイマー型認知症 / 早期診断 / アミロイド / PET / 脳磁図 / 体性感覚回復曲線 / 皮質興奮性 / 軽度認知障害 |
研究概要 |
本研究の目的は、脳の神経ネットワークやシナプス機能の変化を鋭敏に捉える事のできる脳磁図を用い、PET によるアミロイドイメージングと組み合わせることによって、アルツハイマー病(AD)の早期診断、特に認知症発症前の軽度認知障害(MCI)の段階や、更には臨床症状がまだない前臨床(preclinical)段階での診断に役立つ機能的バイオマーカーを明らかにしていくことである。 本年度は、当該施設倫理委員会承認の元、軽症AD 、健忘型MCI 及び健常高齢者(NC)を対象にPiB-PET検査と脳磁図検査を行った。PiB-PET検査によりアミロイド陽性と判定されたAD7名、MCI5名、NC5名と、アミロイド陰性と判定されたNC19名について、正中神経のペア刺激による脳磁図誘発反応の回復曲線(SEF-R)を用いて大脳皮質の興奮性の検討を行った。SEF-Rは、ペア刺激の間隔(ISI)を、30ms, 60ms, 90ms, 120ms,150msの5段階でランダムに変化させて与え、1発目の刺激に対する反応と、2発目の刺激に対する反応の振幅比をプロットすることにより求められ、その振幅比が1を越えると大脳皮質の興奮性が増していると考えられる。その結果、アミロイド陰性のNC群では、ISIが90ms の時に振幅比が平均1.11と最大になるのに比べ、AD群とMCI群ではISIが120msの時に振幅比が最大になり、それぞれ平均1.22と1.47であった。特にMCI群は、NC群よりも有意に(p < 0.05)興奮性が高まっていることが示された。尚、NC群の中でアミロイド陽性群と陰性群の差は認められなかった。以上の結果より、MCI段階で大脳皮質の興奮性が高まっているとことが示唆され、SEF-Rはアルツハイマー病の早期診断に有用な機能的バイオマーカーとなる可能性があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まだn数が少ないため、preliminaryな結果ではあるが、脳磁図を用いて大脳皮質の興奮性を評価することにより、MCIの段階でそれを捉える機能的バイオマーカーとして利用できる可能性が示された。
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今後の研究の推進方策 |
エビデンスレベルを高めるために、更にn数を増やしていく。また、健常高齢者の中でアミロイド陽性群と陰性群を弁別することが可能な機能的マーカーを積極的に探索していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
PETの薬剤合成や脳磁図測定に必要な電極等、消耗品類の購入、被験者に対する謝金等。また、難易度が高く複雑な脳磁図のデータ解析を効率的に行うため、海外研究者を招へいしてデータ解析用のソフトウエアも開発する。
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