研究課題/領域番号 |
24590910
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
清水 勇一 北海道大学, 大学病院, 講師 (90333608)
|
研究分担者 |
小林 隆彦 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (80333607)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 抗癌剤耐性 |
研究概要 |
癌化学療法の問題の一つに、治療により薬剤耐性細胞が出現し、再増殖を来すことがあげられる。そのため抗癌剤への感受性や耐性に関する分子機構の解明は非常に重要である。 一般に飢餓状態におかれた細胞は、自己の蛋白質やオルガネラの分解により、不足したアミノ酸等を補う反応としてオートファジーが起こる。しかしオートファジーは飢餓以外にも、低酸素、DNA損傷、酸化ストレスなどによっても誘導され、細胞質内蛋白質の品質管理、細胞分化、感染・免疫制御などの様々な生理的役割が推測されている。また、オートファジー制御遺伝子であるBeclin1やAtg7などのノックアウトマウスでは発癌が見られ、癌抑制遺伝子としても機能していると考えられる。しかし一方で、オートファジーは腫瘍細胞が血管新生による栄養供給を受けるまでの栄養補給源として機能することや、抗癌剤抵抗性を助長する可能性も指摘されている。実際、当教室での基礎実験では、各種癌細胞において、5-FUなどの抗癌剤とオートファジー阻害剤を併用することにより、アポトーシスの増強が観察された。現時点では、抗癌剤効果によるオートファジーの分子機構やアポトーシスとの相互作用は十分に解明されていない。 RNA結合蛋白質(RBP)は、mRNAのスプライシング、核外輸送、細胞質内局在、安定性及び翻訳効率の調節などの転写後遺伝子発現調節において重要な働きをしている。申請者らはRNA結合蛋白RBM5が、癌抑制遺伝子p53の転写活性を亢進させることを見出した。さらにRBM5は癌細胞に対して、5-FUなどの各種抗癌剤の感受性を高めることを明らかにした。今後はこれらの基礎研究を発展させ、抗癌剤投与中の癌細胞において、RBM5に直接結合する新規のオートファジー制御遺伝子を検索し、抗癌剤感受性あるいは耐性に与える影響を検討し、その機序を解明し、抗癌剤耐性克服への応用を目指している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
RBM5に結合するmRNAをRNA-結合タンパク質免疫沈降法を実施し、胃癌細胞からRBM5に特異的に結合するmRNAを回収している。しかし ながらRBM5に結合しているRNAは非常に微量であり、mRNAそのものが不安定であり、定量・定性の検討が非常に困難であり、再現性の 検討を慎重に行っている。 また幾つかの候補遺伝子が、胃癌細胞株に特異的なものか、他の消化器癌細胞にも機能している普遍的なのかの見極めは簡単では ない。また一方で、これらの候補遺伝子がRBM5に特異的に作用しているのかを慎重に検討している。 癌細胞において、オートファジーが抗癌剤による抗腫瘍効果に与える影響は、抗癌剤により様々であり、いくつかの抗癌剤に絞る必要性があることが判明した。また癌細胞の種類によっても影響度は様々であった。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は抗癌剤のうちは5-FUおよびCDDPにしぼり込み、胃癌細胞内での検討を行ってい く予定である。 オートファジー誘導試薬としてmTOR阻害薬のラパマイシン、オートファジー阻害薬として3-MAあるいはクロロキンの影響を調べる ・既知のオートファジー上流調節遺伝子のRBM5への結合性を検討:mTOR、Akt、AMPKなど ・既知のオートファジー制御遺伝子のRBM5への結合性を検討:Beclin、LC-3、p62、Atg遺伝子群など ・オートファジーの誘導・阻害により著しく変動するRBM5結合遺伝子の探索:特にアポトーシス、細胞周期調節蛋白、DNA損傷修復因子などに注目する
|
次年度の研究費の使用計画 |
次年度以降は、 新規のRBM5結合性オートファジー制御遺伝子の癌細胞内の発現量の検討する。さらには、RBM5結合性オートファジー制御遺伝子の癌培養細胞株における機能解析していく予定である。 ・オートファジーの誘導・阻害において、上記の発現プロファイル解析にて選択された候補遺伝子のmRNA発現量変化をReal Time PCR法により確認し、タンパク発現量変化をWestern Blot法により確認 ・候補遺伝子の発現ベクターを作成し、癌細胞において強制発現させ、あるいはsiRNAを作成し、癌細胞においてノックダウンさせて、オートファジー誘導能に与える効果を検討 ・候補遺伝子の強制発現あるいはノックダウンが、癌細胞の抗癌剤感受性に与える影響を細胞周期(FACS法)、細胞増殖(MTT法)、アポトーシス誘導(TUNEL法)などにより検討 ・RBM5の発現量が、候補遺伝子の機能(オートファジー誘導能)に与える影響を検討
|