研究課題
本研究は、胃粘膜内へのHelicobacter pylori(HP)感染における上部消化管疾患の多様性を規定するレニン-アンジオテンシン(RA)システムの胃粘膜内における生理活性メカニズムを、胃癌細胞株あるいは動物スナネズミモデルにHPを感染させることによって解明することを目的の一つとしている。更に、近年増加するNSAIDsや低用量アスピリン(LDA)内服者の消化管粘膜傷害の発症にかかわると考えられるHPの病原因子の影響についても同時に解明するとともに、実臨床におけるLDAやクロピドグレルなどの抗血栓薬の上部消化管粘膜への影響(食道/胃粘膜傷害)も調査する計画をたてている。その中で、動物モデルには、アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)投与することで、胃粘膜内の抗炎症作用や化学発癌予防効果があるか否かにについても評価することも目的に立案された。本研究では、HP非感染スナネズミとHP感染スナネズミで、アンジオテンシンII受容体の発現が時間経過とともに有意に異なることが示された。それは、胃粘膜内の単核球を含めた炎症細胞浸潤の程度とも明らかに相関し、胃粘膜内のIL-8を含めた炎症性サイトカイン値とも有意に相関していた。LDAの胃粘膜傷害はHP陰性若年者でも1週間の短期間での内服で約80%の症例で胃粘膜傷害の新規病変を認め、クロピドグレルの併用で消化管粘膜傷害の出現に対して相加作用を認めた。更に、HP陽性者でその影響が顕著となり、食道粘膜傷害も同様の傾向を認めた。消化管粘膜傷害の予防には酸分泌抑制剤によって胃内pHを上げることが重要であることも証明した。同時にNSAIDsやLDAに関連した薬剤性胃粘膜傷害を引き起こしうる宿主側の因子として考えられる薬理遺伝学的な遺伝的な因子を同定し、最適な予防方法を構築することも調査も行い、候補遺伝子としてLDA内服中のSLCO1B1のTT型が、消化管粘膜傷害の危険を増加させる遺伝子である可能性が示した。
すべて 2014
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