研究課題/領域番号 |
24590917
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
武藤 学 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40360698)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 癌 / 臨床 / アルコール |
研究概要 |
国際がん研究機関(IARC)は、 エタノールの代謝産物であるアセトアルデヒドが、食道扁平上皮癌の明らかな発癌物質と認定しているが、アセトアルデヒドがどのようにこれらの発癌に関与しているかは、いまだ十分解明されていない。本研究は、食道扁平上皮におけるアセトアルデヒド暴露によるDNA損傷、遺伝子発現異常を検討し、発がんメカニズムを分子レベルで明らかにすることを目的とする。平成24年度は、倫理委員会の承認を得たプロトコルに従い、食道癌症例におけるアセトアルデヒド由来DNAアダクト食道内蓄積の有無を内視鏡下生検組織を用いて質量分析器(LC/MS/MS)で検討した。背景食道粘膜における異型上皮がない場合、軽度の場合、中等度の場合、高度の場合にわけてアセトアルデヒド由来DNAアダクトの相関を検討すると、前がん病変とされる異型上皮が多いほど食道内のアセトアルデヒド由来DNAアダクト蓄積が有意に高く、アセトアルデヒドが食道の発がんの初期過程に関与している可能性が示唆された。また食道扁平上皮細胞(HEEC)にアセトアルデヒドを暴露する実験系を確立後、アセトアルデヒド代謝に関わるALDH2酵素をsi RNAを用いてノックダウンし、HEECにおけるアルデヒド暴露後のRNA発現をマイクロアレイで比較検討した。その結果、ALDH2野生型HEECが高濃度のアセトアルデヒドに暴露された時の分子変化が、ALDH2ノックダウンHEECでは低濃度のアセトアルデヒド暴露で起きることがあきらかになった。これらは、同じ濃度のアセトアルデヒド暴露ではALDH2ノックダウンのほうが細胞障害が起きやすいことを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の研究実施計画に記載した、「ヒト食道粘膜におけるアセトアルデヒド由来DNAアダクトと異型上皮の発生、ALDH2遺伝子型、飲酒歴との関連 性の検討」、および「ヒト食道正常扁平上皮におけるアセトアルデヒド暴露後の細胞内分子変化の検討」は、順調に解析が進んでいる。前者においては、さらにDNAアダクト数がどのような遺伝子変化に関与するかを次世代シークエンサーでエキソーム解析を進めている。また、後者においては、マイクロアレイで確認された分子変化のカスケード解析を行い、どの分子経路が最もアセトアルデヒド暴露後に重要な役割を果たしているかを検討している。一方、研究計画書に記載した「長期的アセトアルデヒド暴露ヒト食道正常扁平上皮細胞における分化能の変化」に関しては、hTERT(ヒトテロメラーゼ逆転写酵素Human telomerase reverse trasncriptase)を導入して不死化させたヒト食道正常扁平上皮(HEEC)を用いた3次元培養の系を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
「ヒト食道粘膜におけるアセトアルデヒド由来DNAアダクトと異型上皮の発生、ALDH2遺伝子型、飲酒歴との関連性の検討」において、食道内で検出されたアセトアルデヒド由来のDNAアダクト量と遺伝子変異の相関を検討し、アセトアルデヒド由来のDNA損傷が遺伝子変異を引き起こすイニシエーターになるかどうかを検討する。「ヒト食道正常扁平上皮におけるアセトアルデヒド暴露後の細胞内分子変化の検討」において同定された分子について、mRNAおよびタンパクレベルでの詳細な検討を行い、アセトアルデヒドによって発がんが引き起こされる標的分子を同定する。また3次元培養によって、アセトアルデヒド暴露細胞が扁平上皮の組織構築において異常を来すかどうかを検討するとともに、アセトアルデヒドによる標的分子のカスケードを阻害することで組織の異形成を抑制できるかどうかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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