研究課題
国際がん研究機関(IARC)は、 アルコール飲料に含まれるエタノールの代謝産物であるアセトアルデヒド(AA)が、食道扁平上皮癌の明らかな発癌物質と認定しているが、どのように発癌に関与しているか十分解明されていない。本研究は、食道扁平上皮におけるAA暴露によるDNA損傷、遺伝子発現異常を検討し、発癌メカニズムを分子レベルで明らかにすることを目的とする。平成26年度は、AA代謝酵素のALDH2をレンチウイルスを用いて食道扁平上皮細胞に高発現させると、AA暴露によるDNA損傷(N2-ethylidine dG)が減少することを明らかにした。さらにヒトと同じ遺伝子変異(エクソン12の114番目塩基のGからAへの1塩基置換)が入るとALDH2高発現細胞でもDNA損傷は減少しないことを明らかにした。一方、これまでの研究で、ALDH2遺伝子をsi RNAを用いてノックダウンすると、ALDH2野生型細胞であっても、AA暴露後のN2-ethylidine dG量が増加することから、ALDH2機能低下では、DNA障害が起きやすいことが示された。また、ALDH2欠損マウスでは、エタノール自由摂取後の食道内DNA損傷(γ-H2AX)が野生型マウスと比較して食道扁平上皮の基底層および傍基底層に高く発現すること、ALDH2欠損マウスの食道上皮にはAA由来DNA損傷(N2-ethylidine dG)が野生型に比較し優位に高く検出されること、エタノール投与によりALDH2野生型マウスでは食道扁平上皮内のALDH2 発現が誘導されること、を明らかにしており、これらの成果は、AA暴露による食道発癌に新しい解釈、すなわち、エタノール投与によりALDH2が誘導され、AAによるDNA障害が減少し、発がん予防に働くことを示唆するものと考えられた。
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