研究課題/領域番号 |
24590923
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
志村 貴也 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (90405192)
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研究分担者 |
海老 正秀 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40611629)
吉田 道弘 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 臨床研究医 (20636328)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | HB-EGF / 大腸癌 / 胃癌 / EGFR / Amphiregulin |
研究概要 |
切除不能進行大腸癌に対してセツキシマブやパニツムマブといった抗EGFR抗体薬が臨床的に使用されているが、これらの薬剤はKRAS遺伝子に変異がある大腸癌に対しては臨床的効果を示さないことがわかっている。さらにKRAS野生型の症例のなかでも一部の症例に効果を示すのみであり、抗EGFR抗体の治療効果予測因子を発見することは、無駄な副作用を減らすことや医療経済的にも大変重要な課題である。我々の過去の胃癌の検討において、HB-EGF-CTFの核移行が多くみられる症例においてはEGFRシグナル伝達経路を抑制するだけでは抗腫瘍効果としては弱いことがわかっていることから今回、抗EGFR抗体薬が使用されたKRAS野生型のヒト大腸癌組織に対して抗HB-EGF-CTF抗体により免疫組織化学染色を行い臨床病理学的に検討した。 HB-EGFの局在と抗EGFR抗体の抗腫瘍効果との関連は認められなかったものの、HB-EGFの発現と抗腫瘍効果の相関を認めた。他の6種類のEGFRリガンドすべての免疫染色を施行したところ、HB-EGF以外にもAmphiregulin, TGF-α, Epiregulinが発現しているものは薬剤により有意な奏功率の上昇と無再発生存期間の延長をみとめた。さらにこれら有意な4種類のEGFRリガンドのうち2種類以上のリガンドが発現しているものは奏功率:53%に対して、1種類以下のものでは奏功率:0%と著明な差をみとめた。これらのことから凶器の4つのEGFRリガンド中2種類以上発現例を抽出する解析法は大腸癌抗EGFR抗体療法におけるバイオマーカーとして有用であると考えられた(Yoshida M, Shimura T, et al. J Cancer Res Clin Oncol. 2013 Mar;139(3):367-78).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト大腸癌組織の検討においてHB-EGF-CTFと抗EGFR抗体薬の関連は見いだせなかったもののそこから派生して、HB-EGFに加え他の3種類のEGFRリガンド(Amphiregulin, TGF-α, Epiregulin)の発現が薬剤の奏功と深く関わることを見いだし国際学会ならびに英語論文にて報告した。
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今後の研究の推進方策 |
胃癌細胞ならびに大腸癌細胞を使用し、細胞レベルでのHB-EGF-CTFの働きについて検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
HB-EGF-CTFが通常通り核へ移行する野生型のHB-EGF(wt-HB-EGF)とHB-EGF-CTFが核へ移行しない変異型のHB-EGF-mCを強制発現させた胃癌細胞株からcDNAを作成しDNAマイクロアレイ解析を施行し、増殖・浸潤・転移に関与する遺伝子を抽出する。 マイクロアレイにて抽出された標的因子とHB-EGF-CTFの関連性をPCR、ウェスタンブロットで評価する。 抗がん剤併用下に癌細胞増殖や浸潤能の評価を行ないHB-EGFならびにHB-EGF-CTFならびにその標的因子との関連性を検討する。
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