研究課題/領域番号 |
24590930
|
研究機関 | 秋田大学 |
研究代表者 |
堀江 泰夫 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30282164)
|
研究分担者 |
大西 洋英 秋田大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00313023)
大嶋 重敏 秋田大学, 医学部, 講師 (50375268)
|
キーワード | 炎症性腸疾患 / マウスモデル / イノシトールリン脂質 |
研究概要 |
腸上皮細胞特異的PIPK III欠損(PIPK III KO)マウスには下痢、血便がみられ、組織学的には上皮細胞の空胞形成と粘膜固有層から粘膜下層に及ぶ炎症細胞浸潤および線維化が観察され、クローン病でみられる臨床症状や腸病変の病理組織所見と一致した。PIPK III KOマウスの大腸上皮細胞の頂端側膜蛋白質と基底外側膜蛋白質の局在には異常がみられ上皮細胞の極性が障害されていることが明らかになった。特に、基底外側膜蛋白質として細胞間接着結合と密着結合の形成に関与するE-cadherin蛋白質とclaudin-4蛋白質の局在が障害されていた。また、PIPK III KOマウスの大腸粘膜では腸管内抗原の透過性の亢進がみられ、腸内細菌が侵入し易くなっていることを蛍光標識デキストランや蛍光標識大腸菌を用いた検討で明らかにした。さらに、PIPK III KOマウスの小腸パネート細胞ではオートリソゾームの成熟障害に起因するオートファジー異常と分泌顆粒の形成障害がみられ、大腸腸内細菌叢ではClostridium leptum subgroup、Atopobium clusterの有意な減少とEnterobacteriaceae、Enterococcus clusterの有意な増加が観察され、このような腸内細菌叢の構成変化はクローン病の腸内細菌叢でもみられ、腸管の炎症を増悪させると考えられる。以上の結果から、PIPK III KOマウスの腸管における炎症は、粘膜バリア機構の破綻に基づき発症し、パネート細胞のオートファジー障害に基づいた分泌顆粒の形成障害に起因する腸内細菌叢の構成異常が増悪因子として関与していると考えられた。PIPK III KOマウスはクローン病の動物モデルとして有用であると考えられる。
|