研究課題
本研究では小腸腺癌の分子生物学的特徴を検討し、新規治療法の可能性を探索した。H26年度は、我々が樹立した小腸腺癌細胞株であるSIAC1細胞で観察された種々の遺伝子異常について、小腸癌の臨床検体を用いて検索した。SIAC1株のもととなった手術検体を含めて11例で検討したところ、TGFbR2、ACVR2などマイクロサテライト不安定性の標的遺伝子の変異を11/11 (100%)、ミスマッチ修復遺伝子の発現低下を5/11 (45%)、b-cateninの遺伝子欠失を3/11 (27%)で認めた。またSIAC1株の特徴を検討するために、この細胞をマトリゲル内で三次元培養を行った。この小腸癌細胞株はオルガノイドを形成し、部分的にMuc2およびTFF1陽性の分泌細胞へと分化することが明らかになった。また前年までに施行したSIAC1株を用いた抗癌剤スクリーニングで効果を認めたEribulinとBortezomibを用いて、ヌードマウスへの腫瘍細胞のxenograftへの治療効果とその作用機序を検討した。Bortezomib投与はvivoにおける腫瘍の縮小効果は示さなかったが、Eribulin投与は著明に腫瘍の縮小効果を示した。また組織の免疫染色を行ったところ、コントロール、Bortezomib投与の腫瘍組織に比べてEribulin投与の組織では、b-catenin、サイクリンD1の発現低下をみとめた。これらの結果から小腸癌の分子生物学的な特徴とそれに応じた新規治療法を提案しえたと考える。今後もこの細胞株また新規細胞株を樹立し、小腸癌など難治性小腸疾患の研究を継続する予定である。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件)
American Journal of Pathology
巻: 185 ページ: 550-562
10.1016/j.ajpath.2014.10.006.