研究課題
これまで申請者は腸管上皮細胞においてGSK3によるβカテニン、Atoh1機能制御が細胞増殖・分化のみならず、種々のシグナルがGSK3βの活性及び標的蛋白を転換させることで細胞種決定まで関わることを明らかとしてきた。本研究ではGSK3-Atoh1複合体に特異的なアダプター蛋白を同定し、複合体形成制御機構を明らかとすることで、GSK3に関与する各シグナル同士でのGSK3制御機構を理解し、腸管上皮細胞の分化制御機構を解明することを目的とする。具体的には1) GSK3とAtoh1の複合体形成蛋白の同定、2)シグナルクロストークによるGSK3機能解析、3)GSK3複合体調節小分子化合物の探索を中心課題に据え、GSK3機能調節による腸管上皮細胞分化制御機構を明らかとすることを目的とする。前年度は研究計画に則り、各種シグナルにおけるAtoh1蛋白安定性およびGSK3リン酸化活性を解析した。その結果炎症性サイトカインであるTNFα、菌体成分であるフラジェリン、LPS刺激においてAtoh1蛋白の安定化を認めた。さらにAtoh1蛋白安定により大腸癌細胞株においても粘液産生形質の獲得を認めたことより、Wntシグナル以外でのAtoh1蛋白安定機構を発見した。今年度は各シグナルとGSK3α/β活性の関係を解析しており、GSK3α/β活性化をGSK3α/β自己リン酸化により評価を行ったところ、GSK3α/βをリン酸化するAKT活性が亢進していた。AKTによるGSK3不活化がAtoh1安定化に寄与し、がん幹細胞分画の増加、抗がん剤耐性能、遊走能亢進を持つことから、炎症発がんにおける悪性度獲得機構を解明しえた。
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