研究課題
本研究は申請者らがこれまで見出してきた「腸管組織の恒常性維持に必須の免疫調節機構は、上皮細胞と粘膜内リンパ球間における連鎖・協調によって制御される」という独自の概念や知見を基盤として、腸管上皮細胞と粘膜内リンパ球とのクロストーク、およびそれによる粘膜内のサイトカイン分泌など免疫学的変動について着目している。その結果、本研究では当該研究期間に以下のような成果が得られた。1)レトロウイルスベクターGFP-RVおよびDsRed-RVを用いてマウスT細胞株における接着因子CD66aの各splice variantの過剰発現系を構築し、機能的解析を行った。これらのウイルスを感染させGFP+あるいはDsRed+細胞をsortingし、T細胞受容体(TCR)シグナル依存的な細胞増殖能を解析した結果、細胞内ドメインにチロシン残基を有するCD66aの過剰発現によってのみこれが抑制されることを確認した。2)野生型マウスから単離したCD4+T細胞に上記と同様の過剰発現を誘導した結果、TCR依存的な細胞増殖能のほか、IFN-γなどのサイトカイン産生能、またCD69などの活性化マーカーの発現も、やはり細胞内ドメインのチロシン存在下でのみ抑制されることを明らかにした。これらの研究結果はin vivoにおける生理的なT細胞機能をCD66aシグナルが変調させる事実を示唆している。さらに現在、この分子メカニズムがトランスジェニックマウスや疾患モデルにおいていかなる影響を与えるのか解析を進めている。
2: おおむね順調に進展している
腸管粘膜の免疫調節機構は上皮細胞とリンパ球のクロストークが根幹にあり、CD66aがその中枢を担っていることに着目しているが、生理的なin vivoにおけるT細胞の機能解析もCD66aによって調節され得ることが実証されたことは大きな成果であるといえる。
今後はさらに詳細にT細胞におけるCD66aの機能を解析するとともに、遺伝子改変動物や疾患モデルを用いてin vivoにおけるダイナミックな表現系の解析を行う予定である。
平成25年度末時点で、当該年度の機器保守契約費用の支払が完了していないため。また、試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため。検討する数・種類を拡大して解析を行うため、試薬を増量して購入する予定である。
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