研究課題
本研究では申請者らがこれまでに得られた知見を基盤として独自に研究を展開してきたナチュラルキラー(NK)細胞による特異的受容体/リガンドを介したその細胞傷害活性に着目し、炎症性腸疾患の病態における特異的な免疫学的異常に対する新規治療法の開発基盤樹立を目標とした研究を展開している。その結果、本研究では当該研究期間に以下のような成果が得られた。1)マウスの脾臓からNK細胞を単離し、つづいてAsialoGM1陽性亜集団をFACS soringによって単離したのちにIL-2などのリコンビナント サイトカインの添加など適切な条件下で培養した結果、このサブセットはエフェクター・メモリーT細胞の分化や増殖を抑制する機能がある可能性を見出した。2)マウスの脾臓から単離したナイーブT細胞をRag欠損マウスに移入し、兆円惹起性のエフェクター・メモリーT細胞が誘導されていく過程を経時的に観察し、適切な時点このマウスから単離した各分化段階のT細胞とともに、上記のNK細胞サブセットを共培養した結果、特定の分化段階にあるT細胞に対して特異的な細胞傷害活性がある可能性を見出すことに成功した。これらの成果はこれまで不明確であった各NK細胞サブセットの機能解析を行う上で大きく貢献できるものと思われる。とくに炎症性腸疾患の病態において誘導される獲得免疫反応に対する、あるNK細胞サブセットの細胞傷害活性をこれから詳細に解析する上において重要な実験系の確立に寄与するものと示唆され、今後の研究成果が期待されるものと思われる。
2: おおむね順調に進展している
NK細胞の前駆細胞や分化マーカーに関する情報が最近報告されてきており、その機能の違いが示唆されている。本研究を遂行する上において、あるNK細胞サブセットの機能を具体的に明示できたことは大きな成果であるといえる。
あるNK細胞サブセットの機能が同定できたことを受けて、今後は炎症性腸疾患における異常な免疫応答において、このNK細胞がエフェクター・メモリーT細胞の分化・増殖に対していかに影響を及ぼしうるのかを詳細に解析する予定である。
平成25年度末時点で、当該年度の機器保守契約費用の支払が完了していないため。また、試薬等が計画当初より廉価で購入可能であったため。検討する数・種類を拡大して解析を行うため、試薬を増量して購入する予定である。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (19件) (うち招待講演 1件)
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